検索すればすぐに答えが見つかるいま、重要なのは「問いかけ」スキルだった!

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問いかけが仕事を創る

『問いかけが仕事を創る』

著者
野々村 健一 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784040824895
発売日
2023/11/10
価格
1,034円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

検索すればすぐに答えが見つかるいま、重要なのは「問いかけ」スキルだった!

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

目まぐるしく変化する社会に生きる私たちは、日々「答えのない課題」と向き合っています。それどころか、そもそも課題自体がなんなのかということすらわからないこともあるでしょう。そうした時代に自ら未来を切り開いていくために必要なのは、これまでにない新たな価値を生み出すこと。

でも、その新たな価値とはどんなものなのでしょうか? この疑問に対し、『問いかけが仕事を創る』(野々村健一 著、角川新書)の著者はこう述べています。

今求められているのは、「新しい選択肢を創造」することです。

「他と違うこと」「これまでにないもの」を創らなければならないのであれば、求めるべきものは「答え」ではなく、多くの可能性を生み出す、良質でクリエイティブな「問いかけ」なのです。(「はじめに」より)

人は誰しも、好奇心旺盛だった子どものころにはさまざまな質問を大人たちに投げかけたはず。先入観やバイアスのない子どもたちの質問は、純粋であるがゆえにクリエイティブで、多くの可能性や想像力を感じさせるものでもあったでしょう。

ところが年齢を重ねるに従い、より速く正確に「答え」を導くことに重きが置かれていくようになります。そのため、従来の常識や正論にとらわれない行動や思考をもとに「問い」をつくることが難しくなっていくわけです。

しかしそれでも、少し視点を変えたり工夫をしたりすることで、“おもしろい問い”を考えていくことは練習できると著者はいいます。それは筋肉のようなもので、意識して鍛えることによって強化できるのだとも。

こうした考え方に基づく本書は、2018年に刊行された『0→1の発想を生み出す「問いかけ」の力』に加筆修正した新書版。きょうは第1章「これからの時代に求められる力とはなんだろうか」のなかから、「問いが重要になる理由」に注目してみたいと思います。

問いが重要になる理由(1)知識や専門性から、好奇心やクリエイティビティへ

知識にアクセスすることが困難だった時代は、知識を持つコトで他者に対して優位を保つことができました。しかし、誰もが同じように持っているスマホで、同じような答えにたどり着ける現代ではそうもいきません。

当然ながらそれが意味するのは、知っていることの価値の低下。知識や情報を知っていることに高い価値があると認識されていた時代とは違い、いまはそうした“答え”にさほど価値が見出されなくなっているということです。

だとすれば、どこに価値があるのでしょうか? この問いに対して著者は、「どんな答えを探そうとするか」「どうやって探そうとするか」「なにを答えとして創ろうとするか」ということの原点に位置する「好奇心」に価値があるのではないかと答えています。

従来は一つの枠の中で点と点をつなぎ合わせて状況を分析していたのに対して、今はまったく違う枠同士の点と点を、枠を越えてつなぐような考え方が求められるのです。(43ページより)

そのためには、「そもそもどんな枠があるのか?」「その関わりはどこにあるのか?」といったことを考える好奇心こそが重要だというわけです。(42ページより)

問いが重要になる理由(2)「モノ」から「コト」へ

知識の普遍性が高まるにつれ、「体験」のような「コト」の価値が向上しているといった話をよく耳にします。

とはいえ「モノ」は単にその位置づけが変わっただけで、価値がなくなったわけでは決してないのも事実。要はモノとコトとの距離が近づき、より密接な関係になったということです。

ちなみに「モノ/コト」について考えるうえで、もうひとつ押さえておくべき要素が「デジタルの台頭」なのだそう。

今「デジタル」というものを完全に無視してビジネスを考えられる企業はないのではないでしょうか?(中略)興味深いのは、デジタル戦略に取り組むことでその企業が本質的に問われるのは「自社がデジタルな体験を通じてユーザーに提供したい無形資産は何か」ということなのです。(45ページより)

また、デジタル戦略を通すことによってその企業の持つイメージや思想、行動原理などにもスポットライトが当たるため、消費者はそれらを「デジタル化した世界」として包括的に見ることになります。

つまり、そうしたことを熟知したIT企業がプロダクト以外の活動に積極的に取り組むようになっているのは、自然な流れなのです。(43ページより)

問いが重要になる理由(3)常識から非常識へ

「なにかを新たに創造する」ということは、「なかったものを創る」ことであり、いまあるものを否定することでもあるでしょう。また、これまで常識とされてきたことを、「実は常識ではないのでは?」と疑ってみることでもあります。

ここで重要なのは「常識」というものには賞味期限があり、変化していくものであるという認識です。

もちろん、その時代が決めた社会のルールや価値観には、理解と一定の敬意を示す必要があります。しかし、今のような時代の変わり目には、この常識と非常識の境界線を探る力が求められます。(46ページより)

旧来の常識を新しい常識によって上書きする人が現れれば、私たちは次の新しい常識を待ち望むようになります。すなわち新たな常識と、それを提案できる人を求めるようになるということです。(46ページより)

問いが重要になる理由(4)“なぜ”だけでは原因にしかたどり着けない

基本的に“なぜ”は、過去を探る重要なアプローチ。「なぜそれは起きたのか?」というような問いに対する答えは、過去の歴史のなかにあるからです。しかし、そこにとどまってしまうと、過去からしか答えを導き出せなくなってしまいます。そこで…

その“Why?=なぜ”という問いを、時間を遡って突き詰めようとするのではなく、未来へ向けて展開すると、それは、“Why not?=なぜやらないの?”“What if=もしこうだったら?”“How might we=どうすればできる?”と広げていくことができます。(48ページより)

すなわち、「なぜ」から生まれるもう一歩先の洞察がアクションを生み、新しいものを生み出すということです。(47ページより)

問いが重要になる理由(5)戦略から文化へ

著者いわく、いま世界中の優秀な経営者が真剣に考えているもののひとつが組織の「文化」という目に見えない課題。

しかし、変わろうとして文化を変えられる企業は多くないのも事実です。

だからこそ、変わりたいと考えている企業がいま欲しているのは、戦略を立てられる人物ではなく、文化を少しずつでも変えていける人物なのだといいます。それは、これまで見つけられていなかった方法を、自らの行動を通して提示できる人物だということ。(49ページより)

著者は、「どうすれば日本で働く人に、“問いかけ”を通じて自由に発想してもらうことの楽しさや価値を伝え、行動を起こすきっかけをつくることができるだろうか?」という問いかけを自身に与えて執筆に臨んだそう。

そうして生まれた本書は、これからの時代に求められるべきものの本質を教えてくれることでしょう。

Source: 角川新書

メディアジーン lifehacker
2024年1月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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