江戸後期の天保年間。目付の永井重彰は、藩主の身辺を取り仕切る小納戸頭取である父の元重から、藩主が長年患っている病について聞かされる。その手術を藩医でなく、全身麻酔を使う華岡流外科の在村医・向坂清庵に依頼し、諾を得たという。
重彰にとって向坂は、生後間もない息子の命を救ってくれた恩人だ。藩主の手術にもしものことがあれば、向坂の身も危うくなる。そこで元重は策を講じ…。
高潔を絵に描いたような武家の元重、その決断と苦悩に思いをはせる重彰。永井家の流転する運命を濃密に描いた医療時代小説。(角川書店・1980円)
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2024年1月14日 掲載
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