一人何役もこなすリーダーへ送る、現場が動くマネジメント6つのチェックポイント

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業績を最大化させる 現場が動くマネジメント

『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』

著者
中尾 隆一郎 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784866802381
発売日
2023/11/21
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】一人何役もこなすリーダーへ送る、現場が動くマネジメント6つのチェックポイント

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

著者によれば、『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』(中尾隆一郎 著、フォレスト出版)は「現場で働くのが楽しくなるための技術をまとめた本」だそう。

働くのが楽しい人と組織が多くなると業績が向上します。そして、その楽しく業績を挙げている人と組織をもとに、事業の方向を変化させ続ける。すると、さらに業績が向上します。そうすると現場のメンバーは自分たちの声が事業をよい方向に変えていると感じ、さらにやりがいを感じ、働くのが楽しくなる。

こんな好循環が起き続けるのです。(「はじめに」より)

つまり重要なのは、現場のメンバーがやりがいを感じ、活躍できるマネジメントを行うこと。また、そのために必要なのは、リーダーが現場に目を向け、「現場のメンバーがなにをしたくて、なにが得意なのか」を知ること

そしてポイントは、それらと「会社やリーダーが、現場のメンバーにやってほしいこと」との接点を見つけること。それらが実現できれば、現場が自律的に動き始めるというわけです。

ただしリモートワークはオンラインコミュニケーションが普及してきた現在では、それを対面ではなくオンラインで実現させなければなりません。そのため、職場で対面して相手のことを把握するよりも、難易度は上がることになるでしょう。

つまり、これからのリーダーに求められるのは、リモートワークとリアルワークの併用時代に現場のメンバーを見るスキル。それこそが、本書のテーマである「現場が動くマネジメント」だということです。

具体的には、「Why なぜ、現場を見る必要があるのか?」「What 現場でなにを見るのか」「How どうやって現場を見るのか」「Who 誰が現場を見るのか」「Where どこで現場を見るのか?」「When いつ現場を見るのか」と言う順序で解説が続いていきます。

きょうはその全体像をつかむために、各章の冒頭に設けられた「まとめ」部分に焦点を当ててみたいと思います。

Why なぜ、現場を見る必要があるのか?

組織は「部分最適化」、すなわち“自分の部門やチームだけのことを考える最適化”に陥りやすい傾向があると著者は指摘しています。しかも組織を必要以上に細分化し、細分化されたそれらの組織ごとにMBO(目標管理制度)やインセンティブ(褒賞)制度を導入することで、部分最適化を加速させてしまっている可能性があるのだとか。

そのため、組織全体の全体最適を実現するためには「制約条件理論」を活用することが重要です。その1つの解決策として、「KPIマネジメント」を活用することが挙げられます。(50ページより)

著者の『最高の結果を出すKPIマネジメント』(フォレスト出版)によって注目を集めることになったKPIについては、「数字で管理する話」だと考えている方が多いかもしれません。

しかし著者のいうKPIマネジメントは、「放っておくと部分最適になる組織を全体最適に蘇らせる方法論」なのだといいます。(50ページより)

What 現場でなにを見るのか

現在、時代の大きな変化に対応するために、「自律自転する組織」が求められています。これを実現するためには、ミドル(中間管理職)がハブとなるミドル・アップダウン型の組織構造が重要となります。

しかし、ミドルは多くの業務を担当しているため、何らかの支援が必要です。

具体的には、「ミドルの育成」「現場の見える化」「アップダウンする仕組み」の3つの要素を整備し、支援することが重要です。(92ページより)

残念なことに、現場に丸投げして放任する「現場を見ない」組織が多く見受けられると著者は指摘しています。

しかし現場が自律自転するためには、組織全体の目標(ゴール)を揃えることが必須。さらには著者オリジナルのマネジメント手法である「G-POP(ハイパフォーマーの仕事の仕方)」を導入することで、自律自転の促進が可能になるといいます。もちろん、現場の「悪い兆し」を早期に把握することも重要。(92ページより)

How どうやって現場を見るのか

この章で紹介されているのは、「どうやって現場を把握するか」についての具体的な方法。具体的には、日報、月報、業務レポート(ロングミーティング)、ウォークアラウンド、仮説検証型ウォークアラウンド、チーム会、1 on 1、グループコーチング、CRM、SFA、MAなど。加えて、著者が所属していたリクルートグループの「なにもしないのに現場が見える仕組み」も明らかにされています。

最近はさまざまな支援ツールもあるので、自社の状況に合わせて組み合わせるとよいようです。ポイントは、「経営陣や上司、本部組織から現場がしっかり見られるかどうか」だそう。(132ページより)

Who 誰が現場を見るのか

ここで考えるのは、誰が現場の情報を見る必要があるのかということ。

例えば、現場のリーダーは当然現場の情報を把握する必要があります。ところが、権限移譲の誤解とSOC(スパン・オブ・コントロール=配下のメンバー数)が多すぎると、現場の情報が把握できないケースがあります。

また、上司の上司や本部スタッフが現場の情報を把握する必要があるのかについても考えます。加えて、経営者、ビジネスプロセス上の他組織、あるいは親会社には現場情報が必要なのかについても検討します。(180ページより)

こうしたことが重要なのは、どのような立場であっても「現場情報の可視化」は必要不可欠だから。(180ページより)

Where どこで現場を見るのか?

私たちはとかく、①リアル(実際に会って実施する)、②オンライン(ZOOMなど)、③テキスト(チャットツールなど)という3種のコミュニケーション方法について、「①がよいのか、それとも②か、あるいは③か」と「OR」の発想になりがち。

しかし最適解は「OR」ではなく「AND」、つまり、これらを上手に組み合わせて設計することだといいます。(204ページより)

When いつ現場を見るのか

現代のリーダーはさまざまなことを求められているため、現場を見るために使える時間や頻度も限られます。

そこで重要なのは「なんのために現場を見るのか」、つまり目的を明確にすること。そうすることで、最小限の時間・頻度で最大の効果が得られるわけです。

また、現場の情報を“兆しの段階”で収集できれば、結果として最大の効果が得られるようです。(232ページより)

本章ではこれらについて、詳細な解説がなされています。自律自転する組織をつくるために、本書を活用してみてはいかがでしょうか?

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2024年2月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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