ひとりで全部やらなきゃ思考から脱却!「相談する力」が最強のビジネススキルである理由

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相談する力

『相談する力』

著者
山中哲男 [著]
出版社
海士の風
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784909934048
発売日
2024/01/24
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】ひとりで全部やらなきゃ思考から脱却!「相談する力」が最強のビジネススキルである理由

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ビジネスを進めていくうえで、「アイデアを出す」「論理的に考える」「人前でしっかり話す」「人を率いる」といったことはもちろん重要な意味を持ちます。しかし『相談する力――一人の限界を超えるビジネススキル』(山中哲男 著、海士の風)の著者によれば、それらを上回る最強のビジネススキルは「相談」なのだそう。

相談は、業種や職種を問わず、やりたいこと、実現したいことに近づくネクストアクションを見つけることのできる手段。とくに自分に知識や経験がない新たなことにチャレンジする際には、とても頼りになるスキルだというのです。

なかには「ひとりでやったほうが早い」「相談は相手の時間を奪ってしまう」「人づきあいが苦手だ」などの理由で相談を躊躇する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そういう方にこそ、「ひとりで考えて行動する」から「みんなで考えて行動する」へ考えを改めてほしいのだといいます。

新しいことにチャレンジする際、自分ひとりで考えて行動したとしたら、次の選択肢を見出せなくなったり、立ち止まったりする可能性が生じます。いいかえれば、「自力」だけにこだわってしまうと、そこから先に進めなくなるわけです。

そういうときこそ、相談をうまく使いながら、自分だけではなくて周りの人たちの視点や経験に基づく情報をいただいて、一緒に考えてもらうことで、ネクストアクションへとつながっていくのです。

そこで相談相手が共感してくれたら、応援者になってくれる可能性もありますし、誰かを紹介してくれて、そこから次の行動が生まれるかもしれません。(「はじめにーーなぜ相談が、一人の限界を超える最強スキルなのか?」より)

大切なのは、「ひとりで全部やらなきゃ」という状態から、もう少し広い輪のなかでものごとを考えて選択肢を見出し、行動できるようになること。そんな考え方に基づく本書の1章「なぜ相談するのか」のなかから、きょうは「相談するメリット」に注目してみたいと思います。

メリット1:「思い込み」にツッコミをもらい、思い込みを外すことができる

著者が相談の特徴としてまず伝えたいのは、「相談とは思いどおりに進めるための場ではない」ということだそう。むしろ相談は、思い込みを外すためにあるものだというのです。

ものごとを前に進めようとする際には、自身の経験などをもとに「こうかな」とあたりをつけるはず。

しかしその後もひとりで考え続けてしまうと、次第に視野が狭まって「そうなんだろう」という決めつけが多くなってしまうかもしれません。その結果、ビジネスに支障をきたすことも考えられます。

そんなとき、たとえば最新の情報を持っている人に会って相談すると、「昔はそうだったけど、実は今は違うんだよ」といったことを教えてもらえるわけです。

だから、相談を「思い込みを外す場」として捉えて活用することは、新たなネクストアクションを見出すことにつながり、結果的にビジネスを前へ進めていく力となります。(40ページより)

「思い込み」に端を発するすれ違いは、ビジネスの現場で起こりがち。でも、どんな些細なことであっても、相談の場を活用すれば「思い込み」にツッコミをもらうことができるということ。(38ページより)

メリット2:ネクストアクションが見つかり、行き詰まった状況を打破できる

「ひとりで考えて行動する」ことの最大の問題は、ネクストアクションを見出すことができずに行き詰まること。

いいかえれば、見立ての段階で止まってしまうわけです。しかし、そんなときにも相談をすれば、ネクストアクションが見えてくるはず。それが、行き詰まった状況を乗り越える手段として機能するのです。

人に相談しに行く。すると質問されるから、それにまた答えていく。このアクションの繰り返しで、目指しているものが見立てから仮説、そして計画へと具体化されていきます。(46ページより)

したがってネクストアクションが見えないときこそ、ひとりで考えるのではなく相談するべき。単純なことのようにも思えますが、相談には実際のところ、現状を打破する力があるということです。(42ページより)

メリット3:やりたいことに共感してくれる「応援し合える仲間」が増える

著者は相談を、「共感し合える仲間同士が、お互いリラックスした状態で行うもの」と捉えているのだそうです。

ただし一般的には、「相談とは、教えてもらうためのものである」というイメージが強いかもしれません。すなわち相談の場を、「教える/教えられる」の関係性だとする考え方です。

しかし、相談される側が教える人で、相談する側が教えられる人となると、多くのすれ違いが生まれて当然。相談する側は気を遣ってしまい、相談される側には「答えを教えないといけない」というプレッシャーがかかってしまうわけです。

だから私は、「教える/教えられる」という上下の関係ではなくて、対話をして共感してもらうヨコの関係が相談の本来的な特徴の1つだと考えています。(48ページより)

するとそこには、相談を通じた共感が生まれます。応援し合える緩やかなつながりが増え、相談できる相手も増えるため、ネクストアクションにつながる選択肢も増えるということです。(47ページより)

メリット4:やりたいことや事業の「解像度」が上がる

「自分の事業がどのステージにあるかがわからないまま打たれる施策」が世の中には多いと著者はいいます。

それは、「目的」「顧客」「商品・サービス設計」「マーケティング」「制約」の5要素についての検証が欠けているから。とはいえ、論点ひとつひとつの検証をすべて自力で行うのは不可能。

だから、相談によって多様な視点から考えてネクストアクションを洗い出し、検証して「解像度」を上げていく必要があるのです。(55ページより)

そうすれば思い込みを外すために役立つツッコミをもらうことができ、いろいろな人の視点や経験に基づく情報も得られるに違いありません。ネクストアクションにつながる複数の選択肢が見えてくることでしょうし、解像度はどんどん上がり、やりたいことの実現に近づいていくわけです。(53ページより)

日々の仕事のなかにシンプルな相談のノウハウや習慣を取り入れるだけで、次々とネクストアクションが見つかり、やりたかったことが実現していくと著者は述べています。

もちろん、そうしたことを繰り返していけば、応援してくれる仲間も増えていくはず。つい「自分でやらなきゃ」と考えてしまいがちな方は、本書を参考にするべきかもしれません。

Source: 海士の風

メディアジーン lifehacker
2024年2月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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