「オリジナル映画の火を灯し続けるためには」 原作・脚本・監督 内田英治 緊急インタビュー

インタビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

マッチング

『マッチング』

著者
内田 英治 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041145029
発売日
2024/01/23
価格
814円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「オリジナル映画の火を灯し続けるためには」 原作・脚本・監督 内田英治 緊急インタビュー

[文] カドブン

 内田英治監督によるサスペンススリラー「マッチング」が、公開8週目に突入し、4月11日時点で観客動員数66万人、興行収入9.3億円を突破している。内田監督といえば、2020年の「ミッドナイトスワン」のヒットも記憶に新しい。同作は興行収入8億円を超え、実写オリジナル脚本作品としては異例のヒットを飛ばした。小説や漫画原作の実写映画、そしてアニメ映画がしのぎを削る邦画界で、オリジナル脚本の作品が生き残っていく戦略や課題、今後の展望について、内田監督に話を聞いた。

文/瀧川かおり

■「オリジナル映画の火を灯し続けるためには」 原作・脚本・監督 内田英治 緊急インタビュー

「オリジナル映画の火を灯し続けるためには」 原作・脚本・監督 内田英治 緊...
「オリジナル映画の火を灯し続けるためには」 原作・脚本・監督 内田英治 緊…

■オリジナル最新作「マッチング」のヒットの要因

――まずは、「マッチング」の動員65万人超え、興行収入9億円突破、おめでとうございます。

内田(敬称略):ありがとうございます。

――前作「サイレントラブ」(2024年)、そして「ミッドナイトスワン」につづいて「マッチング」が成功した感想をお伺いしたいです。

内田:うれしいです(笑)。日本は海外に比べて極端にオリジナル作品が少ないので。オリジナルやりたくてもやっぱりできない理由があって。一度火が消えたら、多分もう二度とつかないだろうから。ギリギリのところで、火がつき続ければいいなと思います。

 でも単純にオリジナルでやれるんだということを、観ている人たちも含めて思ってもらえればいいなと思います。意外と観客の方は知らなかったりするじゃないですか。原作ものとオリジナルの違いって。でもオリジナルだって発信するとそれを応援してくれる機運になるので、それはすごくよかったと思っています。それで、もっとオリジナル映画が広がれば、もっとみんな応援してくれるかな、という感じですね。「ミッドナイトスワン」のころはあんまりそういうことは考えていませんでしたけど。やりたいことをやったら、たまたま多くの人に観てもらえた。「サイレントラブ」や「マッチング」になってくると、「オリジナルをつづけるんだ」そして「いろんなジャンルに挑戦するんだ」という考えもあったので。好き勝手好きなことだけを詰め込めばいいってもんじゃないんだっていうのが、この2つの映画ですよね。

――「マッチング」は小説も好評ですが、映画と小説の循環というものもあると思います。それぞれ反響が違うと思いますが、それぞれ感想というか、発見されたことなどあれば聞かせてください。

内田:2個あると思ったんですけど、1個はオリジナル映画が原作ものに対して弱いことって、積み上げがないことじゃないですか。漫画だったら週刊誌で何年も連載してきて、ファンを少しずつ増やしていって、別の分野で積み上げてきたものを最後、映画でドーンと世に出す感じだから、圧倒的に知名度も強いじゃないですか。でもオリジナル映画は公開された日とか宣伝が始まる(公開の)数ヶ月前から初めてみんな目にしたり耳にしたりすると思うので、弱いっていうよりこの情報過多な時代だと難しいと思うんですよね。だから小説を少し前に出すことによって、少しでもみんなに届けられる、知名度を積み上げができるっていうのは1ついいことだと思います。

 もう1つは今回の「マッチング」が特に大きくて、「ミッドナイトスワン」もそうでしたけど、(小説には)映画の中に描かれていない部分を描くことができるので、サイドストーリーとして、めちゃめちゃお客さんたちが楽しみにしてくれる。2回楽しめるっていうのが1つ売りになって、昔流行った「竿竹屋はなぜ潰れない」と同じ原理です(笑)。

「オリジナル映画の火を灯し続けるためには」 原作・脚本・監督 内田英治 緊...
「オリジナル映画の火を灯し続けるためには」 原作・脚本・監督 内田英治 緊…

■小説と映画、どっちからでも楽しめる

――「マッチング」について「小説を読んだ人」「映画を観た人」それぞれの反響(感想)を目にして感じたことやあらためてそれぞれ注目ポイントなどがあれば、教えていただけますでしょうか。

内田:映画を見た人は、(小説は)映画ではほとんど描かれない刑事2人の視点になっていて全然違うストーリーとして楽しめる。プラス、吐夢の背景を描いている。それは「ミッドナイトスワン」と一緒で、映画では描かれなかった凪沙の背景を描いたんで、そういう部分を観てもらえるとうれしい。小説からスタートした人は、映像化されて役者っていう具体像が出てくるんで、それが面白いんじゃないかなと思いますね。でもこれは絶対セットですね。

――どちらが先でもいいですか?

内田:大丈夫です。(吐夢役の)佐久間大介くんはネタバレに厳しいようですが(笑)。僕はオチまで読んでも映画観れるタイプなので。嫌な人もいますよね。

――そういう人は映画が先のほうが良いですね。

内田:そうですね。でも本当は小説だけじゃなくて、テレビ、舞台とかもっとメディアミックス的なやり方がオリジナルの戦略になり得るんで。将来的にはもっと小説じゃないものもやりたいんです。続編がもしあるんだとしたら、いわゆる積み上げるという作業はいろんなメディアを使ってやりたいなと思います。

KADOKAWA カドブン
2024年04月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク