『定点写真で見る 東京今昔』
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『定点写真で見る 東京今昔』鷹野晃著
[レビュアー] 尾崎世界観(ミュージシャン・作家)
ライブカメラの映像を見るのが好きだ。ストーリーもない、主役もいない、リアルタイムで映し出されるなんでもない街の定点映像を見ていると、なぜか妙に落ち着く。
そして、本書に惹(ひ)かれる理由もそれに近い。ページを開くだけで、震災や戦災を経て、変わりながら今もそこにある東京の過去と現在を、定点写真で見比べることができる。中にはほとんど変わらない場所もあるが、変わらないということこそ不自然で、大きな変化こそ自然だと感じる。
自分はめまぐるしく発展し続ける時代に生きているつもりでいたけれど、これを読めば今もまさに途中なのだと思い、どこか肩の力が抜けると同時に、そのことに安心感すら覚える。誰かの未来は自分の現在で、自分の現在だって誰かの過去になる。すべてまだ途中だということ。どうせ何もかも変わっていくのだから、今をしっかり生きていきたいと思わせてくれる一冊。(光文社新書、1870円)