【試し読み】960万部突破!「しゃばけ」シリーズ最新刊『いつまで』⑥

【試し読み】960万部突破「しゃばけ」シリーズ最新作『いつまで』

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 若だんな達は離れで揃って、早めの夕餉を取った。そして妖達は、なるだけ長い間、夢の内を探ろうと、急いで寝床へ向かった。
 今夜は兄や達も、夢に入ってみるという。二人は若だんなへ、自分達が留守の間に、離れで何かあった時は、庭の稲荷にいる守狐を呼ぶよう言ってから、部屋を離れた。
 若だんなも横になると、早く夢を見て、場久や火幻を探したいと願った。ただ、いつもより早く横になったからか、妙に眠れず、いささか困ってしまう。
「きゅい、若だんな、遊ぶ?」
 今日も布団に入ってきた小鬼達が、寝間着の袖内や、懐にもぐり込んできて暖かい。ゆっくり撫でていると、その内、眠くなってきたから、小鬼達を潰してしまわないよう、腕でそっと抱え込む。
 ところが、その時だ。若だんなはやみの中で、目を大きく見開いた。自分が、夜の離れにいるのか、既に夢の内なのか、驚く程、分からなくなっていた。
(いや、もしかしたら周りの闇は、妖達が使う、影なのかもしれない…)
 そんな気がしたのは、闇の中に誰かがいると、思えたからだ。もちろん兄や達や、馴染なじみの妖ではない。そのあかしに小鬼達が震え、若だんなにしがみついている。
 若だんなは総身を硬くすると、貧乏神の言葉を、頭の中に蘇らせた。
〝ひゃひゃっ、皆も用心しなよ。二度あることは、三度あるって言うからな〟
 その時闇の中から、誰かが若だんなに話しかけてきた。
「おや、長崎屋の若だんな。もう、私に気がついてるみたいだね」
 いつも妖達と暮らしているし、少しばかり妖の血を、引いている故か。そう話してくる声は、ぞくりとする禍々しさに満ちている。
 すると昼間、その声を聞いたのを思い出した。
「以津真天。お前さん、火幻と一緒に影内へ消えた、あの妖だね。西から来た一人だ」