『昭和史の10大事件』
- 著者
- 半藤 一利 [著]/宮部 みゆき [著]
- 出版社
- 東京書籍
- ジャンル
- 文学/日本文学、評論、随筆、その他
- ISBN
- 9784487809264
- 発売日
- 2015/08/24
- 価格
- 1,320円(税込)
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昭和史の10大事件 [著]半藤一利、宮部みゆき
[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)
異色の組み合わせだと思われるかもしれないが、半藤一利と宮部みゆきは同じ都立墨田川高校の卒業生なのだそうだ。年は30歳離れているが、同じ土地で暮らした者同士、東京の下町言葉で喋る遠慮なしの会話は、読んでいるだけで微笑ましくなる。
だが内容は超硬派だ。今年は終戦70周年であり、仮に続いていたら昭和90年という節目の年でもある。この90年間での10大事件をそれぞれが選び出し、歴史探偵である半藤は知識を、小説家の宮部はその事件に関わった人々の機微を主題に論じ合う。
まずはお互いが選んだ事件を披露する。ここはまるで生徒の宮部が半藤先生にレポートを見てもらうかのようだ。二・二六事件を背景にした『蒲生邸事件』(文春文庫)を著しただけに、宮部の歴史に対する見方はとても推理作家的である、と半藤は見る。
ほぼ昭和と共に生きてきた半藤が選んだ事件は、自分がいくらか関係があったり参加したりした事件だという。まさに昭和の生き証人として、歴史に埋もれてしまう前に残しておかねばならないことばかりだ。
話し合いの結果選ばれたのは、(1)昭和金融恐慌、(2)二・二六事件、(3)大政翼賛会と三国同盟、(4)東京裁判と戦後改革、(5)憲法第九条、(6)日本初のヌードショー、(7)金閣寺焼失とヘルシンキ・オリンピック挑戦、(8)第五福竜丸事件と『ゴジラ』、(9)高度経済成長と事件―公害問題・安保騒動・新幹線開業、(10)東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤事件)。
歴史は時間の連なりだから、(1)から(10)までは何らかのことでつながっている。それを意識して対談を読んでいくと、なるほどと合点がいくことばかりだ。あの戦争はどうして起こったのかという半藤の意見は、現代の私たちが一番耳を傾けなくてはならないことだと思う。
しかし堅苦しい話ばかりではない。個人的な恨みや喜び、未来への希望もたくさん詰め込まれている。今年の締めくくりに最適な一冊である。