売れる自己啓発書の3つの要素――“一発逆転”“口ぐせ”“お任せ”

レビュー

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いま売れる自己啓発書“3つの要素”とは?

[レビュアー] 倉本さおり(書評家、ライター)

 ここ最近、自己啓発書に冠せられるタイトルの複雑化︱というより、エクストリーム化が著しい。例えば、昨年7月に発売されるやいなや大反響を呼んだ「可愛いままで年収1000万円」(!)。あるいは直近の刊行物なら「宇宙にお任せするだけで勝手にうまくいく手帳2017」(!!)などなど。書名を眺めているだけでもけっこうなエンターテインメントとして成立しているのが現状だ。

 そんな風潮の中、目下売上ランキング上位に輝いているのが小池浩「借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれた超うまくいく口ぐせ」(!?)。ツッコミどころ満載のタイトルだが、内容と併せて分析してみるとマーケティング的にも満漢全席であることがわかる。発売からわずか1カ月で6刷という実績は侮れない。

「国内の自己啓発書のトレンドは、大まかに言えば“一発逆転”“口ぐせ”“お任せ”の3つの要素が挙げられます」(書店関係者)。例えば、どん底からの“一発逆転”。これは映画化もされた大ベストセラー「ビリギャル」(「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」)を思い浮かべるとわかりやすい。「具体的な数字を書名に入れ込んでエビデンスを強調する点もポイントです」(同)。また“口ぐせ”に関してはスピリチュアル系に限らずビジネス系も同様。要するにポジティブ思考をこまめに言語化して自ら意識する重要性を説いているわけで、自己啓発にとって当然といえば当然のこと。

 問題は“お任せ”というメソッドのほうだ。「自ら啓(ひら)く」にあたって受動的なスタンスは本来の意義と真逆なようにも思える。実際に本書をめくってみると……「宇宙さん」なるゆるキャラ(?)が、主人公である著者に向かってドヤ顔で叱咤&命令しまくるベルトコンベヤ式レッスンが繰り広げられているではないか!

 そこで思い出したのが、10年ほど前に社会現象を巻き起こしたビリーズブートキャンプ。どんなに複雑そうに見えるタグを貼り付けてみても、われわれの本質は結局変わらないのかも。

新潮社 週刊新潮
2016年11月10日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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