『人間関係に悩まなくなるすごい心理術69』
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人間関係で悩まないようにする努力はもういらない
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
カリフォルニア州立大学のクリスタル・パークは、「過去1年間でもっともストレスを感じたこと」という調査をしてみたことがあるのですが、「人間関係」がリストの最上位に挙げられました。
米国クレムソン大学のロビン・コワルスキによる2020年の研究でも同じ傾向が明らかにされています。
コワルスキは、30歳から76歳までの189人の成人に、「もし若い頃の自分にアドバイスするとしたら、どんな言葉をかけてあげますか?」という質問をすることで、人生において何を後悔しているのかを間接的に調べてみたのですが、やはり「人間関係」が後悔をもたらす要因の1位でした。(「まえがき」より)
『人間関係に悩まなくなるすごい心理術69』(内藤誼人 著、ぱる出版)の序文にはこう書かれています。やはり数ある悩みのなかで、いちばん厄介なのが人間関係であるようです。実際のところ、共感できる方も多いのではないでしょうか?
しかし裏を返せば、「人間関係をうまくこなせるようになれば、人生における悩みの大部分を解決できる」ということにもなるはず。ただし、それは簡単なことではありません。では、どうすればいいのでしょうか?
そのための具体的な処方箋を提供するのが、本書の目的です。
人間関係に悩み、悶々とした気持ちで暮らしている人に、ぜひ本書をお読みいただきたいと思います。心の中の鬱々とした気持ちは、きれいさっぱり吹き飛び、晴れやかな気持ちになれることを保証します。(「まえがき」より)
そんな本書のなかから、きょうは第4章「人間関係がうまくいくための心理テクニック」に焦点を当ててみたいと思います。
人の心は、私たちが思っているよりも強い
日常会話のなかに「トラウマ」ということばが出てくる機会は少なくありません。もともとは心理学の学術用語だったものが、いまではすっかり日常後になってしまったわけです。苦しい思いをしたとき、「なんだかトラウマになりそう」などと口にしたりしますよね。
でも実際のところ、トラウマになりそうな出来事が起きたときにはどう対応すればいいのでしょうか?
この疑問に対して著者は、「すぐにどうにかしようとするのではなく、まずは少し様子を見ましょう」と述べています。慌ててカウンセラーのところに駆けつけたりしなくてもいいというのです。
コロンビア大学のジョージ・ボナノは、配偶者が亡くなってしまい、悲しみに打ちのめされたときでも、カウンセリングが必要かというと、決してそんなことはないと述べています。
たいていの人は自分の力で、人間関係の喪失の苦しみから立ち直るのであって、カウンセリングを受けると、かえって回復力が弱められてしまい、事態がさらに悪化する可能性さえあるとボナノは指摘しています。(113〜114ページより)
もちろんこれは、配偶者を失ったケースだけにいえることではなく、人間関係の苦しさなどにもあてはまるはず。いずれにしても私たちの心には自然な回復力が備わっているので、悲しい気持ちになったとしてもカウンセラーを頼る必要はないということです。
私は心理学者ですので、本来なら同業者であるカウンセラーの肩を持って、「苦しいときにはカウンセリングやセラピーを受けるといいよ」とアドバイスしたいところですが、まずは自分の自然な回復力を信じたほうがいいような気がします。(114ページより)
どんなに苦しい出来事が起きても、しばらくの期間を乗り切れば、自然にそれを受け入れられるようになるということ。もちろん回復にかかる時間は人によって違うでしょうが、「一生、苦しいまま」ということは絶対にないのです。(113ページより)
こちらがニコニコしていれば、相手からもニコニコが返ってくる
私たちの笑顔には感染効果があるもの。そこで、普段からできるだけニコニコしていましょうと著者は勧めています。ニコニコしていれば、周囲の人たちもニコニコを返してくれますし、お互いにそうしていれば人間関係が悪くなることは決してないからです。
オランダにあるアムステルダム大学のアニーク・ヴルートは、笑顔の感染力を調べる実験をしてみました。
デパートやスーパーなどで買い物をしているお客に、男女のアシスタントが動物保護のための募金を持ちかけるという実験なのですが、アシスタントはあるお客には笑顔で声をかけ、別のお客にはできるだけ無表情を作ってから声をかけてみたのです。
少し離れたところにいる観察者が、声をかけられたときのお客の表情を分析しました。
その結果、アシスタントがニコニコしながら声をかけると、64.9%のお客さまもつられて笑顔になりました。無表情で声をかけたときには64.7%が無表情でした。(118〜119ページより)
笑顔で募金をお願いしたときには51.3%が快く応じてくれたものの、無表情のときには29.3%だったそう。この結果からも、笑顔で話しかけたほうが相手も好意的に応対してくれることがわかったわけです。
だからこそ、人に冷たくされたり、意地悪されたりしたくなかったら、いつでもニコニコしているべきだと著者は述べているのです。
スウェーデンにあるウプサラ大学のウルフ・ディンバーグは、120人の大学生に筋電計(EMG)の装置を顔につけてもらい、30ミリ秒(1ミリ秒は1000分の1秒)だけ、笑った顔や怒った顔のスライドを見せてみました。
30ミリ秒というのはほんの一瞬で、人間には知覚できない速度。ところがほんの一瞬でも笑った顔を見ると、知覚できないはずなのに大頬骨筋(笑顔を作るときに口の角度を上下に引く表情筋)が反応することがわかったのです。(120ページより)
こんなところからも、普段からニコニコする習慣をつけておくことがいかに大切かがわかるはず。少なくとも、試してみる価値はあるのではないでしょうか?(118ページより)
著者によれば、人間関係のことで悩まないようにするために苦しい努力は不要。ほんのちょっと思考を変えたり、行動やライフスタイルを変えたりするだけで、誰でも悩みを吹き飛ばせるというのです。そうした考え方を軸とした本書を活用し、厄介な悩みを追い払いたいものです。
Source: ぱる出版