売れる「ライブコマース」が人を惹きつける2つの要素

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売れる「ライブコマース」入門

『売れる「ライブコマース」入門』

著者
松村 夏海 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784866801858
発売日
2022/06/10
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

売れる「ライブコマース」が人を惹きつける2つの要素

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

売れる「ライブコマース」入門』(松村夏海 著、フォレスト出版)の著者は、生まれたときから携帯電話が存在し、物心ついたころにはすでにSNSがあったというデジタルネイティブな「Z世代」。現在は、Tailor Appという会社の代表を務めています。

特筆すべきは、ライブコマース(SNSなどでのライブ配信を通じて視聴者とコミュニケーションをとり、購買や来店などの促進を行うツール)について「ものすごくしっくりくる」と述べている点。それはZ世代ならではの感覚であり、だからこそ、自分の世代がライブコマースの会社を運営することに意味があると感じているというのです。

例えば、テレビショッピングは、単にいい商品があれば、視聴者がついて売れちゃうんですが、ライブコマースはそうはいかない。ライブコマーサーの売る力が必要ですし、それにはSNSの活用が必須です。

当然、そのノウハウについては、SNSネイティブのほうが圧倒的に強いわけです。

実際、2020年7月に立ち上げた僕の会社は、年間100本以上のライブコマースを企画段階から行ない、大手メーカーのライブコマースでは商品が売り切れたり、D2Cメーカーでもライブコマースの視聴率を上げ、LTV(ライフタイムバリュー)の高いユーザーを巻き込んだりと、業界随一の実績をあげています。

(「はじめに――Z世代の僕がライブコマースの会社を立ち上げた理由」より)

折しも創業したころは、「日本にライブコマース文化は根づかないのではないか」と思われていた時代。しかし、参入してくる企業も少なく、マーケティングの視点とライブコマースの視点を両方持っている人材がいなかったからこそ、逆にチャンスだと思ったのだそうです。

結果としてうまくいったのは、それだけ多くの企業がライブコマースのノウハウを求めていたということ。そこで、もっと多くの人や企業にライブコマースを始めてほしいという思いから、本書を執筆したというわけです。

しかし、そもそもライブコマースとはどのようなものなのでしょうか? その答えを、第1章「ライブコマースとは何か?」から探し出してみたいと思います。

「テレビショッピング」と「ライブコマース」の違い

ライブコマースはテレビショッピングと比較されることがよくありますが、まず重要なポイントは「それぞれ利用している媒体」が違うということ。

テレビショッピングは、当然ながらテレビを媒体として使っています。何年も前からテレビ離れが叫ばれていますが、今でも家に帰ったら、とりあえずつけるという人は多いでしょう。PV数でいえば、100万から1000万ぐらいは取れる媒体です。

一方、ネットを使ったライブコマースは、テレビショッピングほどPVは取れませんし、“ながら視聴”できないというハンデもあります。テレビは受け身(受動性)のメディアですが、ネットはある能動性が必要な媒体です。(21ページより)

しかもライブコマースは“生”ですから、その時間に見に来てもらわなければなりません。したがって、「なぜそれを観たいのか」という、明確な「視聴動機」をつくる必要があるのです。(21ページより)

視聴動機を生み出す2つの要素

「視聴動機」を生み出すおもな要素として、著者は「人」と「ここでしか買えないモノ」を挙げています。どちらもなければお客さまを呼び寄せることは不可能ですが、いざ呼び寄せることができれば、テレビよりも結びつきが強くなり、購入確率も上がるというのです。

そういう意味では、「マスの消費者に向かってゆるやかな結びつきをつくる」のがテレビショッピングであり、テレビほど大人数ではないけれど、「個人の消費者と強い結びつきをつくる」のがライブコマースだということです。(22ページより)

なぜライブである必要があるのか?

もちろんテレビショッピングにも生放送はありますが、大きく違うのは「相互コミュニケーション」ができるかどうか。

テレビショッピングは基本的に、ショッパー側からお客さま側への情報の一方通行。つまり、その商品の機能や魅力を一方的に語ることしかできないわけです。しかしライブコマースでは、お客さま側から「耐久年数はどれくらい?」「この食材はどういう意味な度?」などという質問をすることが可能。

商品理解を深められると同時に、そうしたやりとりをコマーサー(ライブコマースをする人)とすることは、ザッツ・エンターテインメントです。これは、ライブではないYouTube動画や、写真だけのECサイトでもできないことです。(23ページ)

とはいっても、ライブコマースをすればすぐに自由闊達なやりとりが生まれるというほど甘くはないようです。事実、大手テレビショッピングもライブコマースに挑戦しているものの、あまりうまくいっていないのだとか。

なぜかというと、「お客様からコメントを引き出すような話し方」ができていないからです。

僕がプロデュースするライブコマースにもちゃんと台本がありますが、視聴者が質問をしたくなるような仕掛けが、随所に施されています。(23〜24ページより)

ライブコマースは、リアルタイムなやりとりを大勢の視聴者とともに共有できる「ライブ感」が最大の魅力だということなのでしょう。(22ページより)

ライブコマースは、新しい顧客体験

例えば、弊社のお客様で、五島列島の椿を使って商品をつくっている会社があります。この会社では、五島列島の工場からライブ配信をして、どういうふうにつくっているのか、つまりバックヤードをすべて見せながら、一種のクラウドファンディングのような形で販売しています。なので、ものすごく熱心なファンが付いていて、安定的かつ継続的に商品を購入してくれています。(27ページより)

スマホ1台あれば配信できるため、リアルタイムで工場長にインタビューするというようなことも可能。たしかにそういう意味では、テレビショッピングとは表現の自由度が格段に違うといえるかもしれません。

エンターテインメントとしての機能があるわけで、それは「新しい顧客体験」。お客さまはその体験自体にお金を払うと考えることができるのです。(27ページより)

中国では2020年時点で約17兆円の市場になっているライブコマースの大きな波は、日本にも訪れつつあると著者はいいます。

これから、一気に広がっていくだろうとも。そうなってしまってからは資本力の勝負になるでしょうが、いまならまだ個人でも中小企業でも勝てる状況。だからこそ、本書を参考にしながらチャレンジしてみるべきかもしれません。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2022年6月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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