『中華を生んだ遊牧民』松下憲一著
[レビュアー] 産経新聞社
中国の王朝の半分は異民族王朝だ。五胡十六国・北朝・五代・遼・金・元・清がそれに当たり、近年では隋や唐も遊牧王朝とする見解が強い。文化の開けた中央を意味する「中華」の形成には、北方遊牧民が幾度も関与したという。
本書は、4世紀後半に北魏を建国した遊牧民の鮮卑拓跋部(せんぴたくばつぶ)の歴史をたどり、「新たな中華の創造」の過程と隋唐へどのように継承されたかを明らかにしていく。宮殿を都の北に置く北魏の首都、洛陽の構造は唐の長安に継承され、日本の平城京や平安京のモデルに。中華世界で食用だった犬は、北魏の頃から食べられなくなったそうだ。(講談社選書メチエ・1870円)