残された妻が語る、真面目すぎた“太陽様”の肖像と実情
[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)
芸人仲間からは“太陽様”と呼ばれた上島竜兵も、「根本は真面目なので、ずっと不安を抱えていて」「飲んだら将来への不安を語り、最後はいつも泣いていた」ぐらい、ああ見えてとんでもなくネガティブだった。
誰よりも彼の素を知っている妻・上島光=広川ひかるが出したこの本にある、「戦争や天災のニュースに心を痛めていて、『我々が生きているこの世こそが、地獄だと思う』と悲しい顔でよく言っていました。時には感情が高ぶり、泣きながら自室から出てきて、『震災にあった人たちに募金して欲しい』『ウクライナの人たちに募金して欲しい』こういうことを言うこともあったので、その都度、ネットからすぐに募金をして、『今、募金したよ、ちゃんと手元に届くといいね』と、落ち着かせるように言うと涙を拭いて、少しホッとした」との話からもわかるが、ちょっと真面目すぎたんだと思う。
それでも仕事や酒の席ではまだ太陽らしくいられたものの、2020年3月に「志村さんの訃報に接して以降、毎日泣いて」いたらしい。
さらには「コロナ禍で自由に仲間たちとも会えず、仕事も減っていたためか、その頃はお酒を飲んだ上に睡眠導入剤も飲んで、正体を失って眠るという日々」。22年3月にブルース・ウィリスが失語症のため俳優引退を発表したときは「このニュースをテレビで見た竜ちゃんは、急いで自室から出てきて、私に『僕も引退したい』と告げた」。
そして22年5月「10日の夜になって、竜ちゃんがぽつりとこう言ったのです。『もう死んじゃいたい』」。そのすぐ後、彼は自ら命を絶つ……。理由はいろいろあるんだろうが、「若い頃は、映画鑑賞やプロレス観戦などの趣味もありましたが、近年はもう何年も趣味というものがなく」「いつも仕事ばかり」になっていた。弱っているとき何らかの趣味にハマる話をよく聞くが、それは正しいセルフディフェンスのはずなのである。