「竜ちゃん」を誰よりも知っている「妻」が語る、とんでもなくネガティブだった“太陽様”の最期

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竜ちゃんのばかやろう

『竜ちゃんのばかやろう』

著者
上島 光 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784041138595
発売日
2023/08/10
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

残された妻が語る、真面目すぎた“太陽様”の肖像と実情

[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)

 芸人仲間からは“太陽様”と呼ばれた上島竜兵も、「根本は真面目なので、ずっと不安を抱えていて」「飲んだら将来への不安を語り、最後はいつも泣いていた」ぐらい、ああ見えてとんでもなくネガティブだった。

 誰よりも彼の素を知っている妻・上島光=広川ひかるが出したこの本にある、「戦争や天災のニュースに心を痛めていて、『我々が生きているこの世こそが、地獄だと思う』と悲しい顔でよく言っていました。時には感情が高ぶり、泣きながら自室から出てきて、『震災にあった人たちに募金して欲しい』『ウクライナの人たちに募金して欲しい』こういうことを言うこともあったので、その都度、ネットからすぐに募金をして、『今、募金したよ、ちゃんと手元に届くといいね』と、落ち着かせるように言うと涙を拭いて、少しホッとした」との話からもわかるが、ちょっと真面目すぎたんだと思う。

 それでも仕事や酒の席ではまだ太陽らしくいられたものの、2020年3月に「志村さんの訃報に接して以降、毎日泣いて」いたらしい。

 さらには「コロナ禍で自由に仲間たちとも会えず、仕事も減っていたためか、その頃はお酒を飲んだ上に睡眠導入剤も飲んで、正体を失って眠るという日々」。22年3月にブルース・ウィリスが失語症のため俳優引退を発表したときは「このニュースをテレビで見た竜ちゃんは、急いで自室から出てきて、私に『僕も引退したい』と告げた」。

 そして22年5月「10日の夜になって、竜ちゃんがぽつりとこう言ったのです。『もう死んじゃいたい』」。そのすぐ後、彼は自ら命を絶つ……。理由はいろいろあるんだろうが、「若い頃は、映画鑑賞やプロレス観戦などの趣味もありましたが、近年はもう何年も趣味というものがなく」「いつも仕事ばかり」になっていた。弱っているとき何らかの趣味にハマる話をよく聞くが、それは正しいセルフディフェンスのはずなのである。

新潮社 週刊新潮
2023年9月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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