『100兆円で何ができる?』ローワン・フーパー著 

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

『100兆円で何ができる?』ローワン・フーパー著 

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

 1年で100兆円というお金を使えるとしたらどうするかと問われても金額が非日常的な大きさなので多くの人は当惑するだろう。だが科学ジャーナリストである著者は地球と人類、生物の未来へ向けての課題解決にその金額をどう使うかという思考実験を試みた。

 中には「惑星への移住」などSF的なものもあるが「世界の貧困の一掃」や「カーボンゼロの達成」「生物多様性の確保」「あらゆる病気を治す」といった10の課題について、その実現のための様々な方策の実現可能性や費用対効果を検討し、いかに投資すれば有効かを提言する。気候変動などについて危機感を語る類書は数多いが、本書のように多くの科学者や経済学者、NGO等への取材を通して必要とされる投資の具体的金額まで示したものは珍しい。この手法によって対策の現実味が伝わってくるのが本書のユニークな点である。

 100兆円は巨額だが世界中がその気になれば非現実的な投資金額ではないという。我々が力を合わせて進むべき道をわかりやすく語る力作。多くの人におすすめしたい興味深い一冊である。滝本安里訳。(化学同人、3080円)

読売新聞
2023年10月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク