『相手に「やりたい!」「欲しい!」「挑戦したい!」 と思わせる ムズムズ仕事術』
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プレゼンで、自己紹介で「相手の心を動かす」ために欠かせないポイントは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
おなかいっぱいのはずなのに、ボリューミーなスイーツをペロリと平らげていたとか、テレビ通販を見ていたら、限定価格の商品のことが気になって思わず購入していたとかーー。
人は「〜したい」「やってみたい」「欲しい」という衝動に駆られると、動かずにはいられなくなるもの。
『相手に「やりたい!」「欲しい!」「挑戦したい!」 と思わせる ムズムズ仕事術』(市川浩子 著、あさ出版)の著者はそれを「ムズムズの法則」と呼んでいます。
ワクワクして、そのことで頭がいっぱいになり、それを我慢するとムズムズして落ち着かず、目の前のことに集中できなくなり、「〜したい」「やってみたい」「欲しい」ことに取り組みたくてウズウズしてたまらなくなるというわけです。
言い換えると、ムズムズさせることができれば、相手を自発的に動かすことができます。動かすことができるというより、動き出してしまうと言ったほうがいいでしょう。(「はじめに」より)
もちろんそれはスイーツやテレビ通販だけに限ったことではなく、ビジネスにもあてはまるはず。事実、もともと人づきあいが苦手だったという著者は営業職に就いていたころ、「ムズムズの法則」を活用することで営業成績を大きく伸ばすことができたのだそう。現在はそうした実績を活かし、ビジネスコンサルタントとして活躍されているようです。
自分の意見を思うように伝えられなかった方が、お客さまに商品やサービスを堂々とご提案することができるようになるなど、「ムズムズの効果」は仕事にとどまらず多くの人間関係に有効だということがわかっているのだとか。
そこで本書では「ムズムズの法則」、そして「人をムズムズさせる手順」を、さまざまなビジネスシーンで使える具体的なメソッドとして紹介しているわけです。きょうはCHAPTER3「会議・プレゼンでムズムズさせる」のなかから、いくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。
120パーセントの段取りをして挑む
会議や商談、プレゼンなどにおいてこちらの提案を受け入れてもらうためには、その場にいる人たちに納得・理解してもらう必要があります。とはいえ、ただ強引に進めれば相手を納得させられるというものでもありません。重要なのは、相手が自発的に動き出したくなるところまで持っていくこと。
著者いわく、人は自分の意思で(自発的に)行動することを決めると、すごい力を発揮するもの。つまり、プレゼンに参加した人やプロジェクトに参加する人たち全員が自発的に動くことを決め、想いをひとつにして進み出すような状態になったら、プロジェクトは成功間違しだというわけです。
でも、そのためにはどうすればいいのでしょうか?
上司や取引先にムズムズしてもらうには、準備、それも120パーセントの段取りをして挑むことが必要です。
確実にオススメなのが「台本」をつくって臨むことです。
「台本」をつくると、緊張して言うべきことが飛んでしまうといったことがなくなり、大事なキーワードを忘れずに伝えることができますし、「台本」を使ってリハーサルすることになるので、本番で立派に演じ切ることができます。(105ページより)
また、「いざとなれば台本があるし、何度も練習したから大丈夫」と思えるようになるため、気持ちも落ち着くそうです。(104ページより)
PREP法を使って「台本」をつくる
なお、「台本」をつくる際には、次の4つで構成されている「PREP法」が役立つといいます。
1 POINT……「結論」をポイントで伝える
2 REASON……伝えたい「理由」を示す
3 EXAMPLE……理由の根拠となる「具体例」を話す
4 POINT……再度「結論」を伝えて締める
(106ページより)
「なんの提案なのか」という結論を先に伝えると、「なぜそうしたいのか?」「なぜその提案なのか?」と聞き手は気にかけるもの。聞き手の興味がこちらに向いているそのタイミングで理由をしっかり伝えれば、理解してもらいやすくなるのです。
続いて具体的な例を示すと、その時点では相手も問題点(理由)がわかっているため、そのシーンを思い浮かべることが可能。その状態になったタイミングで結論を持ってきて締めれば、「なるほど、それなら…」と肯定的になってもらえるわけです。(106ページより)
自己紹介でムズムズさせる3つのポイント
自己紹介はほんの数十秒、長くても1分ほどで終わらせなければならないもの。そのため時間内に、相手が知りたい情報をしっかり届ける必要があります。そうすることができれば、相手はこちらに興味を抱き、ムズムズしてくれるというわけです。
著者によれば、自己紹介で届けるべき情報は次の3つ。
1 誰に
2 何を(提供)している
3 どんな人なのか
(113ページより)
名刺交換のときも同じで、たとえば「エステティックサロンを経営しております〇〇です」というよりは、次のようにより具体的に伝えるほうが効果的であるようです。
「お肌でもなく頭皮でもなく、脳をマッサージするエステティックサロン(何をしている)を経営しております山本ゆうこ(どんな人)です。
雑念を取り除き、直感力を高めたい方(誰)に人気で、おかげさまで、年間1000人以上のお客さまに喜んでいただいております。(106ページより)
短い時間で行わなければならない自己紹介は、相手が知りたい情報を、フックのあることばで、理解しやすい構成(PREP法)で伝えるべきだということです。(110ページより)
かつての著者がそうであったように、人づきあいが苦手な人にとってコミュニケーションは大きなハードルであるはず。だからこそ本書を活用し、相手の「〜したい」「やってみたい」という衝動を喚起させたいものです。
Source: あさ出版