『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』
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仕事ができる人はやっている!他人との「コミュニケーション障害」を克服する方法
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
最初はやる気に満ちていたのに、時間の経過とともに「とりあえず日々の仕事をこなせればいいや」と思うようになってしまうことはあるもの。では、なぜ、いつから、「仕事ができるようになりたい」という願望が消えてしまうのでしょうか?
それは、仕事で何度も壁にぶつかり、大きな無力感を覚えたからではないかーー?
かつて自身もそうした経験をしたという『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(安達裕哉著、日本実業出版社)の著者は、そのように分析しています。
だとすれば、「仕事ができるようになった人」は、どうやって壁を乗り越えたのかを知りたいところですが、それは、壁を乗り越える方法を教えてくれる人が身近にいたからだそう(ここではそういった存在を「恩師」と呼んでいます)。
しかし、問題もあるようです。「恩師」を持つことができた幸運な人は「仕事ができる人」になれるかもしれませんが、そうでない人は「仕事なんてどうでもいいや」とあきらめてしまうことになる可能性があるわけです。しかし、それはあまりにもったいない話。
そこで私は、コンサルティング会社を辞め起業したとき、それまで学んだことを、できるだけ文章化し、論理的にかつ実践的に「形式知」となるようにブログにすることにしました。それが、私が運営するメディアである、Books & Appの生い立ちです。(「まえがき」より)
そこから生まれたのが、2015年8月に刊行された『「仕事ができるやつ」になる最短の道』(日本実業出版社)。本書は、それを改題し、再編集したものです。
きょうはそのなかから、第3章「『コミュニケーション力』はちょっとした工夫で大きな差がつく」内の「コミュニケーションの障壁を乗り越える『話さず、聞く』技術」に目を向けてみたいと思います。
3つのコミュニケーション障害
人になにかをわかってもらうためにコミュニケーションをとるのは、毎日の生活や社会活動の基本。
しかしそれは大変なことで、しばしば「伝えてもわかってもらえない」ということになってしまったりもします。それは、適切なことばを選択するのが難しいために「コミュニケーション障害」が発生するから。
1 言っていることの意味がわからない
2 言っていることを誤解する
3 言っていることはわかるが、理解したくない。やりたくない
(113ページより)
コミュニケーション障害は、この3つに大別されるそうです。それぞれを確認してみましょう。(112ページより)
言っていることの意味がわからない
たとえば、「アンケート結果を『しゅうれん』させます」と書いても、ほとんどの人はこれを理解しないだろう。ちなみに、「しゅうれん」は「収斂」と書き、「まとめる」意味だ。
言葉は相手の語彙のなかから選択せねばならず、相手の頭のなかにある語彙にない言葉を使うときは、その言葉を調べるように、とくに注意を向けさせる工夫が必要である。(114ページより)
とはいえ、それだけなら、わかりやすいことばを注意深く使えば解決はできるはず。本当に問題なのは、ことばの意味がわからないことではなく、「そのことばが示すことを経験したことがない」というときだといいます。
たとえば「がんばったら報われる」ということばは、がんばったことのない人、報われたことのない人には理解されないわけです。したがって、ことばの意味をわかってもらおうとするなら、その人の経験にある出来事、言葉を使わなければ正確には理解されないのです。(114ページより)
言っていることを誤解する
これは、なにかと政治家や組織のトップの失言がスキャンダラスに取り上げられるときに起きる。「差別だ」だったり、「弱者を見下している」などと批判されることも多い。
本人は「誤解」だとか「真意が伝わっていない」などと言っているが、この事件はコミュニケーションの本質に関わるものだ。
すなわち、「コミュニケーションにおいて生じた誤解は、多くの場合、発言した本人の責任になる」ということである。(115〜116ページより)
しかも「誤解」は、先の「言っていることの意味がわからない」よりもさらにたちが悪いもの。
意味がわからないのなら、「わからない」と口にしたり、無視することも可能。しかし誤解は、文字どおり誤った解釈によって、自分が意図しない事態を引き起こす可能性があるわけです。
だからこそ誤解を招かないように、コミュニケーションの途中では必ず「どのようにこちらの発言を理解しているか」をつねに相手に聞き、フィードバックを受けることが必要となるのです。
それが不可能な場合(公の場での発言やセミナーなど)は、発言の誤解によって起こる結果を引き受ける覚悟を決めておくことも必要であるようです。(115ページより)
言っていることはわかるが、理解したくない。やりたくない
コミュニケーションをする場合、本質的にそれは、相手への要求がセットとなる。
要求のやり方が悪ければ、それは相手にとって「言葉の意味はわかるが、やりたくない」という感情的な結果を引き起こす。
また、「意図的にその要求を無視する」という結果になる。
このときに重要なのは、英語で「デリバリースキル」と言われるスキルだ。これは、いわゆる言い方やプレゼンテーションの手法に相当するものである。(117ページより)
組織においては、コミュニケーションに悩む人が多いのではないでしょうか。著者によればその原因は、「相手の価値観を変えさせるような行為は、受け手を支配していると、とらえられてしまうから」なのだとか。
したがって、相手の価値観を否定せず、相手の価値観に合致するような要求をうまくつくり出すことが、話し手に求められているのだといいます。
つまり、コミュニケーションは、受け手が「聞く姿勢」になっていなければならないということ。(117ページより)
「実行力」「決断力」「コミュニケーション力」「考え抜く力」「働きかけ力」の5つの力を軸として、「仕事ができる人の思考法」を紹介している実践的な一冊。
「仕事ができる人」を目指したいなら、参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: 日本実業出版社