会社員→フリーランスへ。ミニマリストかぜのたみが自分軸で自由に働けるようになったきっかけは?

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低コスト生活

『低コスト生活』

著者
かぜのたみ [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784022519474
発売日
2023/11/07
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

会社員→フリーランスへ。ミニマリストかぜのたみが自分軸で自由に働けるようになったきっかけは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

仕事がつらいと思っても、急に辞められるわけではなく、暮らしているなかでモヤモヤした思いがあっても、なにが原因なのかがわからないーー。

多かれ少なかれ、そんな思いは誰のなかにもあるもの。『低コスト生活 がんばって働いている訳じゃないのに、なぜか余裕ある人がやっていること。』(かぜのたみ 著、 朝日新聞出版)の著者も、数年前までは同じ気持ちだったようです(現在も“精進中の身”なのだとか)。

はじめまして、かぜのたみと申します。

現在、月7万円(家賃込み)で小さく生活しながら、ネットの片隅で「暮らしと自分をととのえる」をテーマにした「かぜたみラジオ」という音声を、YouTubeでたまに配信しつつ暮らしています。(「はじめに」より)

もともと会社員をしていたものの、自分に合わない環境に身を置き続けるうちに心身の調子を崩してしまうことに。

それをきっかけとして自分に合った働き方や生活を模索するようになり、やがて自然に、少しのものとお金で暮らす生活スタイルになったのだといいます。

この本では、お金の使い方や管理方法、衣食住のあれこれ、日々の習慣や考え方まで、私がありとあらゆる試行錯誤を繰り返して「自分で自分を気に入っている状態」を追求した結果としての、低コストライフのメソッドをご紹介します。(「はじめに」より)

当然ながら主軸となっているのは、タイトルにある「低コスト生活」。とはいえ日々の暮らしに関する内容であるだけに、当然のことながら仕事にまつわる考え方も紹介されています。

そこできょうは、「働く」ことに関するトピックスを抜き出してみることにしましょう。

仕事×趣味×日常の配合を探る

会社員とフリーランス、タイプの異なるふたつの働き方を経験してきた著者は、それぞれについて感じたことがあるそうです。

フリーランスは明確な拘束時間がないため、自由時間が多そうに見えますが、私の体感だと「無限にやり続けられる」感覚がある上、仕事も会社のように定期的に受注できる訳ではないので、暇なときと忙しいときの波がどうしても出てきてしまいます。

一方で会社員は、拘束時間は長いものの、フリーランスと比較すると実際に自分が手を動かしている時間はわずかだったりして、時間がダラダラ過ぎていく感じがしました。

上司や同僚との密な人間関係もこなす必要があり、「名もなき仕事」のようなことが多いという体感です。(94ページより)

「会社員かフリーランスか」ということについては、とかく対立軸を前提に考えられがち。

しかし暮らしを考えるうえでは、保証的なことを除けば、「雇われているか否か」ではなく、「自分の性質」と「働き方」の相性のほうが重要ではないかというのです。

実際、著者もさまざまな働き方を経験するなかで、「生産性や効率性を第一優先にすると、働くことが嫌になったり疲れたりしやすい」ということがわかってきたそう。

また、息抜きとして趣味を活用しようとも考えたこともあるようですが、結果的には「仕事から離れるための趣味」のようになり、いいバランスを保つことができなかったそうです。

ですが「仕事」と「趣味」に加えて、自分が戻って来られる「日常」の存在を濃いめに意識してみると、仕事vs.趣味のように分断されることなく、普段の過ごし方を一続きに上手く繋げることができるようになりました。(95ページより)

「仕事」「趣味」「日常」のバランスに正解はありません。だからこそ、試行錯誤しながら自分に見合ったスタイルを探すことが大切なのでしょう。(93ページより)

「働く=就職する…という幻想」

著者は人生の長いあいだ、「働く」=「会社員」だと頑なに信じていたのだそうです。そして、会社に馴染めない自分を社会不適合者だと感じ、働くことが嫌になりかけていたといいます。

しかし、とある無職期間中に知人から仕事を振られ、フリーランスのライターとして働きはじめたことが大きな転機となったようです。その結果、自分はひとりで働くほうが向いているということがわかり、気持ちが楽になったというのです。

会社員のように月給のない暮らしには、経済的な不安もあることでしょう。

しかし、めんどうな人間関係や気晴らしのための出費が減り、いろいろな意味で自由度が上がったということ。しかも億劫なことから離れてみた結果、自分が「なにをしたいか」に立ち返ることができたのだそう。

長いときは1日15時間くらい座って原稿を書き続けたこともありましたが、苦痛だとも思わず、むしろ一つのことに集中して取り組めるのが何よりもラクでした。(160ページより)

当時はいまほど「自宅で働く」ことが普及していなかったため、著者自身も家で仕事するなど想像もしていなかったといいます。

しかし、結果的には心の負担が90%以上減ったようです。なぜなら、毎日電車に乗って通勤したり、化粧や仕事用の服に着替えるなどの細かな配慮を一切しなくてよくなったから。

それは、「どこかに勤めなくてもいいんだ」と新たな働き方の選択肢が加わり、「組織に所属していないと路頭に迷う」というイメージが覆された瞬間でもあったそうです。

いまでもですが、フリーランスで働いていると住まいにとらわれることもないので、自然豊かな地方に住んでみたり、また都会に戻ってみたりして、人生の早めの時点で住む場所を自由に決められたのも良かったなと振り返ります。(160ページより)

たとえ収入が不安定でも、時間と固定された住まいから解放された経験は著者にとって貴重だったといいます。(159ページより)

著者の暮らしがそうであるように、肩肘を張ることなく、できることを無理なくやっていこうという考え方が基盤となった一冊。そのため、読んでみるだけで気持ちが楽になる可能性は大いにあると思います。

Source: 朝日新聞出版

メディアジーン lifehacker
2023年11月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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