『人生を抱きしめる』
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『人生を抱きしめる』遠藤周作著
[レビュアー] 産経新聞社
生誕100年を迎えた作家の初期エッセー集。単行本未収録の文章を含む40編余りが並んでいる。
自動車免許取得までの悪戦苦闘を回想するユーモラスな話もあれば、まじめな文学論もある。「孤独と信頼-文学雑感」と題した文章では、ヴィクトール・フランクルによるアウシュヴィッツ収容所の観察記録『夜と霧』の読書体験をつづる。「どういう極限状態におかれても、人間というものには自由がある」。そんな真理に目を留めた著者はやがて「人間への信頼」もテーマに代表作『沈黙』を書く。人気作家の作品を深く味わうためのヒントが詰まっている。(河出書房新社・1980円)