『コスタリカ』
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<書評>『コスタリカ 「純粋な人生」と言いあう平和・環境・人権の先進国』伊藤千尋 著
[レビュアー] 風樹茂(作家・開発コンサルタント)
◆理想を実現し「大国」に
小国コスタリカが、いかに平和・人権・環境大国になったのかを教えてくれるのが本書だ。日本もコスタリカも民主的な平和憲法を持つ。実態はどうだろうか?
1949年に軍隊を廃止し、軍に近い存在は3300人の国境警備隊だ。その後、中米は紛争が絶えず、隣国ニカラグアに侵攻されたこともある。だが平和を保ち、しかもそれを輸出さえしている。国連核兵器禁止条約を提案してくれたのもコスタリカだ。他にも驚く事実の数々-議員の半数は女性、医療・教育費無料、国民の5分の1は移民か元政治難民、電力は再生可能エネルギーが98%、エコツーリズムの発祥地である…。
さらに子供でさえ「不法投棄されたゴミの悪臭で勉強できない」と憲法法廷に直接訴えることができるのだ。憲法の理念を実現化するために、法律と社会の仕組みを整え続けてきた成果である。
著者はコスタリカを参考に日本国憲法を活用(活憲)することを提案する。忘れてしまった戦後の理想が、爽やかな風となって蘇(よみがえ)ってくる。
(高文研・1980円)
1949年生まれ。国際ジャーナリスト。『反米大陸』など。
◆もう1冊
『コスタリカの奇跡 積極的平和国家のつくり方』(DVD、ユナイテッドピープル配給)