コピーライターはなぜハッとすることばを紡ぐことができるのか?その思考の秘密

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論

『ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』

著者
堤 藤成 [著]
出版社
祥伝社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784396116910
発売日
2023/12/27
価格
1,023円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

コピーライターはなぜハッとすることばを紡ぐことができるのか?その思考の秘密

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』(堤藤成 著、祥伝社新書)の著者は、ことばで紡ぐことは自分の人生を前に進めるために、もっとも気軽に取り組める具体的な「活動」だと述べています。

自分の思索の移ろいをグラデーションのように楽しみにしながら、活動の最小単位である「試み」を行なうのです。

そう考えると言葉が持つ「軽さ」こそが、最小単位の「試み」として魅力的に感じられるようになります。なぜなら体を物理的に動かす「行動」はどうしても、重くなるからです。(「はじめに」より)

その重い「行動」の前に、まず思考を言語化し、ことばを紡いでいくことで小さな「試み」を行なう。具体的な行動に動き出す前に、ことばを紡いで予行演習を行なう。そうすれば、自信を持って一歩を踏み出せるようになるというのです。そして、そんな思いを軸に本書は書かれているわけです。

読んでいただきたい読者としては、「言葉を紡ぐこと」に苦手意識を感じているあなたです。

だけど苦手意識を感じている人は、本当は人一倍、「言葉を紡ぐ」ということに憧れている人でもあります。それはかつての僕なので、僕が一番よく知っています。

そして「言葉を紡ぐ楽しさ」を伝えるということは、「コピーライターはなぜ、ハッとする言葉を紡げるのか?」というよく聞かれる疑問に答えることかもしれません。(「はじめに」より)

「ことばを紡ぐ楽しさ」を実感するためのきっかけを見つけるために、きょうは序章「言葉の散歩に、出かけてみませんか?」に注目してみたいと思います。

ことばが先か、思考が先かーー「仮定する」理論

言葉が先か、思考が先か。

言葉を紡ぐから、想いがめぐるのか。

想いが巡ることで、言葉が紡がれるのか。

(17ページより)

このような「〇〇が先か、△△が先か」という文章が思い出させるのは、有名な「ニワトリタマゴ」。卵から鶏が生まれるのか、鶏から卵が生まれるのか、どちらが始まりなのか判断しづらいことの喩えとして使われるものです。

しかし、この言葉をじっくり観察してみると、「タマゴが先か、ニワトリが先か?」と言う人はいても、「ニワトリが先か、タマゴが先か?」と言う人はいないことに気づきます。

また、略語で語る場合は「ニワトリタマゴ」と言う人はいても、「タマゴニワトリ」と言う人はいません。それは僕たちが意味を超えた語感として、「〇〇が先か?」という場合は短く「卵」を先に言いたいし、略語ではゴロッとした「ニワトリ」を先に言いたい生き物だからです。(17〜18ページより)

些細なことだと感じられるかもしれませんが、こうして仮定し、仮説を持つことから“コピーライター的なものの見方”が生まれると著者はいうのです。(16ページより)

ゆっくりと過程を味わうーー「なぜか気になる」理論

気になったことを深掘りし、ひとつひとつ、ていねいにことばへと置き換えていく。それはとても大切なことであるけれど、とても面倒くさい行為でもあるでしょう。いまは、わざわざそんなことをしなくても気軽にサクッと消費できるものごとがあふれているのですから。

喩えるなら「効率」や「生産性」を重視して目的地まで最短・最速で向かうのが飛行機だとすると、何度も書いたり消したりを繰り返しながら、文字を紡いでいくことは、のんびりと下道を進むバスでの旅に似ています。(22ページより)

バスで旅をする場合は、ゆっくりと日常の景色を楽しみながら進むことができるはず。徒歩や乗用車での移動ほど日常すぎはせず、かといって、飛行機ほど非日常すぎない空気感がそこにはあると著者は表現しています。

つまりはそんな、心理的に守られた、安心な場所で自分を表現できるから、バスの旅は楽しいのかもしれないということ。

もしかしたらお気に入りのノートや、新調したばかりの日記帳にさらりと、日付と名前を入れていく。そんな「言葉を紡ぐ楽しさ」は、自分をほどよくさらけ出し、地続きの旅に出る感覚に近いのかもしれません。(23ページより)

見えてきたことばを紡ぐ楽しさは、一足跳びに目的地に着く手っ取り早さとは異なるもの。事実、手書きで日記帳や手帳にことばを紡いでいけば、結果的に自分と向き合うことができるようになるでしょう。そして、その結果としてなにかが生まれてくるわけです。

だからこそ「ことばを紡ぐ」とは、スピードが求められる現代においては、忘れてしまいがちな“当たり前”に気づくための方法だといえるかもしれないと著者は記しています。(20ページより)

コピーライター目線とは?――「見つめているすべて」理論

著者はここでコピーライターならではのものの見方に触れていますが、そもそも「コピーライター目線」とはなんなのでしょうか? 「コピーライター目線」を持つと、なにができるようになるのでしょうか?

「コピーライター目線」を持つことは、これまで気づけなかった何かを発見することができれば、それはきっとあなたの役に立つヒントになるということです。

ちなみに「目から遠ざかれば、心からも」というヘブライ語のことわざがあります。つまり、「視界を外れてしまうと、心からも外れる。つまり、見ていないものに愛情が向くことはない」という意味です。(27ページより)

すなわち、それほど目線は大事だということです。(26ページより)

ことばを紡いでいく楽しさを実感できるようになれば、そこから可能性を大きく開いていけるようになるはず。そこで自分自身を高めるためのツールとして、本書を活用してみてはいかがでしょうか。

Source: 祥伝社新書

メディアジーン lifehacker
2024年1月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク