『ものづくり中部の革新者』
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<書評>『ものづくり中部の革新者』中部産業遺産研究会 編著
[レビュアー] 笠井雅直(名古屋学院大名誉教授)
◆転換推進の経営者列伝
ものづくり中部の革新者と題する本書は明治以来の愛知・岐阜・三重・静岡・長野の工業化を主導してきた企業の経営者、技術者、そして行政の担い手について手際よく満遍なく取り上げたものである。
執筆者たちが結集する中部産業遺産研究会の30年にわたる発掘・調査研究の成果を反映したものであり、経営者史と事業転換史としても面白く読める。
中部地方は、ものづくりの地として、それも機械工業に特化し、際立った発展をとげている。明治維新当初からの繊維産業の機械化、輸入産品の国産化と電力業・鉄道業への進出、第1次大戦期の輸入代替化、事業多角化、輸出雑貨と大衆消費部門の開拓、満州事変以降の注目産業である自動車工業と航空機工業への取り組み、そして大戦後の徹底した民需転換という、各時代に、新たな企業経営者、企業内の人材が登場するのが中部地方であることを本書は提示する。
中部地方の特徴である航空機工業の技術者もとりあげている。
(風媒社・3300円)
この研究会は1993年設立。前身は71年発足の教員の研究会。
◆もう一冊
『国産航空機の歴史』笠井雅直著(吉川弘文館)