『検閲官のお仕事』
- 著者
- ロバート・ダーントン [著]/上村敏郎 [訳]/八谷舞 [訳]/伊豆田俊輔 [訳]
- 出版社
- みすず書房
- ジャンル
- 歴史・地理/外国歴史
- ISBN
- 9784622096634
- 発売日
- 2023/12/05
- 価格
- 5,500円(税込)
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『検閲官のお仕事』ロバート・ダーントン著
[レビュアー] 長田育恵(劇作家・脚本家)
検閲というと国家的権力が創作を弾圧するという紋切り型のイメージがつきまとう。が、そもそも検閲とはどんな仕事だったのか。本書は18世紀のブルボン朝フランス・19世紀の英領インド・20世紀の東ドイツでの実態を、豊饒(ほうじょう)な史料から解き明かしてくれる。
各章の実例が多彩だ。フランスでは検閲官の承認は即(すなわ)ち国王の認可書籍という惹句(じゃっく)にもなったことから、高官や学者が優雅に書評を述べる一方、侯爵夫人の侍女が暴露本を地下流通させ図書警察が暗躍する。英領インドでは吟遊詩人が謳(うた)うベンガル文学にブリテンの司書たちが挑む。東ドイツはベルリンの壁崩壊前夜、検閲官が西に対する水準を気にする一方、著者は検閲官に忖度(そんたく)し自覚的に共犯者となっていく。
読解・交渉・協力・駆け引き・共犯。見えてくるのは権威主義的な国家の監視ではなく、人間の営為だ。検閲官も出版文化の一翼を自覚的に担い続けてきたのだ。
著者は文書館に没頭し、書き込みやメモ等を渉猟し素顔を掴(つか)む。史料の森でのフィールドワークの喜びにも満ちている。上村敏郎、八谷舞、伊豆田俊輔訳。(みすず書房、5500円)