SNS炎上リスクはどう避ける?顧客離脱に歯止めをかけられる企業がやっていること

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こうして顧客は去っていく

『こうして顧客は去っていく』

著者
宮下 雄治 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
産業/商業
ISBN
9784534060761
発売日
2024/02/16
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】SNS炎上リスクはどう避ける?顧客離脱に歯止めをかけられる企業がやっていること

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

一定の利用者を集めたサービスでも、生き残ることが難しい時代になりました。(中略)あらゆる形態のサービスにおいて、「顧客が去っていく」という深刻な事態に見舞われています。次々と新しいサービスが提供される中、消費者は目新しいものに心を奪われがちです。そうした中、獲得した顧客をいかに離脱させないかが、生き残りをかけた最重要課題になるのです。(「はじめに」より)

こうして顧客は去っていく サイレントカスタマーをつなぎとめるリテンションマーケティング』(宮下雄治 著、日本実業出版社)の著者は、このように指摘しています。

しかも物価高で生活費が上がっているため、消費者の生活防衛意識や節約思考は高まりを見せています。そのため企業の動向を見据える消費者の目はこれまで以上に厳しくなり、「価格」に敏感になっているわけです。

そんななかで企業が真っ先にするべきことは、「顧客が去っていく本当の理由」を突き止め、それを取り除くこと。顧客が他者へ流出することを防がなければならないということですが、著者はこれを「止血」と表現しています。

止血をするためには自社のビジネスを多方面から「診察」し、原因や実態を特定する「診断」を行わなければなりません。そして診断結果に基づき、止血のためのしかるべき「治療」をする必要があるのです。

診察や診断が的外れであれば、適切な治療が行えず顧客離脱の状況は改善できないでしょう。そこで前例や思い込みにとらわれず、顧客と自社の関係を客観的に観察することが意味を持つことになります。

もちろん顧客データの分析も大切ですが、それに加えて、消費の現場や顧客のリアルな姿に目を向けて“顧客の解像度”を上げ、顧客が去る理由を解明していく努力が大切なのです。

こうした考え方を軸とした本書の第1章「これまでの成功法則は通用しない」のなかから、きょうは「実体験に基づいたUGCが経済を動かす」という項目に焦点を当ててみたいと思います。

「UGC」が買い物の仕方を変える

SNSが普及したことの影響で、企業やブランドに対するさまざまな消費者の評価が途切れることなくリアルタイムで発信されています。つまりデジタル経済においては、消費者が発信するリアルな声である「UGC(User Generated Content)の影響力が格段に大きくなっているわけです。

SNSに囲まれて育った世代では、周りがどのように評価しているか、他の人の反応や視線をとくに気にする傾向があります。

「いいね」がどれだけついているか、共感の強さが需要に直結するようになったのも昨今の消費行動の特徴です。

周りや他人の評価や反応がすぐに得られる現代は、これまで以上に多くの人が評価しているモノやサービスに価値を感じる心理効果、いわゆる「バンドワゴン効果」が働きやすくなっています。(27〜28ページより)

UGCは、消費者が実際に商品やサービスを利用したり、店舗を訪れた「リアルな声や姿」。企業に忖度することのないユーザー目線の声は、肯定的な面も否定的な面も包み隠さず描かれているため「共感の輪」が広がりやすくもあります。もちろん、ECサイトや口コミサイト、動画投稿サイトなどで発信されるUGCにも同じことがいえるでしょう。

既存の広告のような企業側から発信される情報ではなく、名前も知らない「多数」の実体験に基づいたレビューが、「失敗しない買い物」に大きく役立つと考える消費者が増えたのです。

とくに、初めて購入する商品やサービス、購入するには慎重さが要求される高額の買い物の場合は、そうしたレビューが大きく役立つのではないでしょうか?(27ページより)

「悪事千里を走る」が加速するネット社会

企業やブランドへの好意的なUGCだけでなく、当然ながらクレームや悪評などの否定的な口コミも存在するもの。そんななか、企業にとって頭が痛いのは次の2つの事実だと著者はいいます。

◾️否定的な口コミの方が、好意的な口コミよりも消費者に与える影響が大きい

◾️企業にとって招かれざる情報は、ネット社会では加速度的に広がってしまう(30ページより)

「悪事千里を走る」ということわざがあるように、悪い噂や評判は、たちまち世間に広まってしまうわけです。しかもネット社会においては、情報拡散のスピードが格段に速くなっています。またSNSなどでは、刺激的な情報ほど目にとまりやすく、拡散されやすい傾向があります。そのため、企業の知らぬ間に、自社の商品やブランドに対するネガティブな口コミがネット上で拡散してしまったりもするのです。

そうなれば、企業のレピュテーション(評判や信頼)は著しく低下します。長年かけて築き上げてきた企業・ブランド価値は大きく毀損し、信用の低下を招くなど経営に大きなダメージを与えかねません。このような事態によって生じる損失リスクは「レピュテーションリスク」と呼ばれます。(31ページより)

過剰で悪質なクレームやいわれのない悪評をネット上に書き込まれたり、謝罪を強要するなどの悪質な行為(カスタマーハラスメント)に伴うレピュテーションリスクが、無視できないほど大きなものになっているのはご存知のとおり。また、カスタマーハラスメントだけではなく、アルバイト従業員や社員などの不適切な言動による炎上も少なくありません。

顧客であれ従業員であれ、少数の人間が起こした不祥事がすぐさまネットで拡散され、会社の社会的信用がガタ落ちになるリスクが生じているのです。

レピュテーションリスク対策の第一歩は、過去に被害を受けた事例からそのパターンを知ること。そして、それらをもとに、自社に起こりうるさまざまなケースを想定したうえで、実践的かつ詳細なシミュレーションとルールを定めておくことが大切。

炎上しかねない情報をいち早く検知するとともに、拡散や炎上の予兆を把握し、雪だるま式に拡散する前に、鎮火に向けた体制を整えることが重要な意味を持つわけです。(29ページより)

既存顧客の維持が大切であることを理解してはいても、ともすれば企業は流行りのマーケティング手法に飛びついたり、目先の売上や市場シェアにとらわれたりしてしまいがち。しかし、どれだけ新規顧客を獲得しても、顧客離脱に歯止めが掛からなければ意味はありません。

そこで本書では、「どうすれば顧客離脱に歯止めをかけられるか」に関する理論、そして多彩な事例を紹介しているのです。そこで顧客離脱を阻止するために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2024年3月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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