『タバコの煙、旅の記憶』
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<書評>『タバコの煙、旅の記憶』丸山ゴンザレス 著
[レビュアー] 荻田泰永(冒険研究所書店店主)
◆人との濃密な触れ合い重ね
旅に紫煙はよく似合う。
私自身、タバコは吸わないが、このエッセイを読むと喫煙者が羨(うらや)ましくなってくる。要所での一服が美味(おい)しそうだ。
丸山ゴンザレスは、危険地帯ジャーナリストとして有名な人物。私も何度か出演したTBS系「クレイジージャーニー」で思い当たる人も多いだろう。
私は無人の極地を1人で冒険している。丸山はその反対に、人間の営みが鍋の底で煮詰まったような、濃密で、汗と危険の香りが漂う世界を旅している。
そんな旅のエッセイ15編が収められた本書は、丸山の若き日の旅の思い出から、現在に至るスラム街での取材記まで多様な旅が綴(つづ)られている。
テレビで見る丸山は強面(こわもて)で近寄り難い雰囲気を持っているかもしれない。彼とは私も親しくしているが、実際の丸山は人懐っこく、気取らない好漢だ。
旅を通して重ねてきた人との触れ合いが彼を形作り、今に繫(つな)がっていることがよく分かる。そして、タバコは彼の旅の重要な道具であることも、見逃せない。
(産業編集センターわたしの旅ブックス・1430円)
1977年生まれ。出版社勤務などを経てジャーナリスト。
◆もう一冊
『世界の混沌(カオス)を歩く ダークツーリスト』丸山ゴンザレス著(講談社文庫)