『嫉妬論』山本圭著

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嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する

『嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する』

著者
山本圭 [著]
出版社
光文社
ISBN
9784334102241
発売日
2024/02/15
価格
946円(税込)

『嫉妬論』山本圭著

[レビュアー] 尾崎世界観(ミュージシャン・作家)

 子供の頃、いつも友達が持っているオモチャが欲しくてたまらなかった。思えば、あの頃から今に至るまで、ずっと嫉妬に振り回されている。たとえ自分が手に入れられなくても、相手の手に入らなければそれでいい。こうしたつくづく厄介な感情に迫るのが本書だ。学者、思想家、作家、様々な偉人たちが残した数々の言葉を引きながら、まるでヒップホップのサンプリングのように、一見バラバラの答えが並ぶことで、「嫉妬」をより多角的に捉えることができる。しかし、嫉妬はその都度形を変えながら、決してその正体を表そうとしない。誰かがああいえば、誰かがこういう。嫉妬は、「嫉妬」について誰かが導き出した、その答えの中にさえも潜む。

 使い方次第では役に立つとわかっていても、なかなか上(う)手(ま)く飼い馴(な)らせないのが嫉妬だ。ならばいっそ、こちらが飼われてしまえばいい。おとなしくいい子にしていれば、飼い主が何かご褒美をくれるかもしれない。それどころか、「嫉妬」こそが、あの頃からずっと自分が欲しかったもので、一生遊べる最高のオモチャなのかもしれない。(光文社新書、946円)

読売新聞
2024年3月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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