『嫉妬論』山本圭著
[レビュアー] 尾崎世界観(ミュージシャン・作家)
子供の頃、いつも友達が持っているオモチャが欲しくてたまらなかった。思えば、あの頃から今に至るまで、ずっと嫉妬に振り回されている。たとえ自分が手に入れられなくても、相手の手に入らなければそれでいい。こうしたつくづく厄介な感情に迫るのが本書だ。学者、思想家、作家、様々な偉人たちが残した数々の言葉を引きながら、まるでヒップホップのサンプリングのように、一見バラバラの答えが並ぶことで、「嫉妬」をより多角的に捉えることができる。しかし、嫉妬はその都度形を変えながら、決してその正体を表そうとしない。誰かがああいえば、誰かがこういう。嫉妬は、「嫉妬」について誰かが導き出した、その答えの中にさえも潜む。
使い方次第では役に立つとわかっていても、なかなか上(う)手(ま)く飼い馴(な)らせないのが嫉妬だ。ならばいっそ、こちらが飼われてしまえばいい。おとなしくいい子にしていれば、飼い主が何かご褒美をくれるかもしれない。それどころか、「嫉妬」こそが、あの頃からずっと自分が欲しかったもので、一生遊べる最高のオモチャなのかもしれない。(光文社新書、946円)