『日本の寄付を科学する』
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『日本の寄付を科学する』坂本治也編著
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
災害が発生すれば、被災地のための義援金や支援金が広く一般に向けて募られ、短い期間にまとまった金額が集まる。人力が必要なところには、全国からボランティアが集まってきて活動する。近年、大きな地震や水害が起こるたびに目にする心強い光景だ。
ところが本書によると、世界的に見れば日本という国は、寄付行動やボランティア活動が低調な国なのだそうだ。確かに、災害時ではない平時の場合を考えてみると……。白状すれば私自身、寄付行動に対してそうとう腰が重い。それを後ろめたく思う反面、「やたらと寄付するのは偽善じゃないか」とか「ひとつ間違うと自己満足の押しつけになるのでは?」とか、ぐるぐる考えてしまう。同じような逡巡(しゅんじゅん)を覚える方は多いのではありませんか。
本書は学術研究の知見から、寄付という「利他」にまつわる数々のぐるぐるに答えてくれる。日本人の寄付の現状、寄付の集め方、寄付の様々なあり方、寄付研究の新展開。浅学の私はまずこうした学問的研究があることに驚き、新鮮な謎解きミステリーに出会ったような気分になった。(明石書店、2750円)