■1-6 他人と違うリズムで生きる方が得

幽霊を信じない理系大学生、霊媒師のバイトをする

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前回のあらすじ

「今、ちょっとアルバイトを探してるのよ。よかったら仕事を手伝ってくれない?」「…なんで俺なんですか?」「千代子ちゃんが、そう言ってるからよ。うちの曾孫が役に立つって」

イラスト/土岐蔦子
イラスト/土岐蔦子

■1-6 他人と違うリズムで生きる方が得

 葬儀の後始末も一通り終わり、ゴールデンウィークも終わった。
 大学の講義もチュートリアルじみた日々が終わって、数学とか物理とか英語とかいった、高校の延長みたいな授業が続くようになった。慣れない出来事が続いて疲弊した脳に、見慣れた数式はすっきりと収まって、自分らしいテンポが戻ってきた。
 大学は電車で30分ほど行った場所にある。田んぼばかりの郊外から中心部に向かう電車は人権団体が指摘しそうなほど混雑するので、1限の1時間前にキャンパスに着いて、図書館か学食で時間を潰す、ということにした。
 もともと俺は極端な朝型体質で、早起きというものが全く苦にならない。かわりに夜更しが大の苦手で、12時まで起きていることができない。この体質だと大学生の一般的なアクティビティのかなりの部分に参加できない、ということを4月の間に理解した。世間の大学生はずいぶん夜遊びが好きらしい。
 始発に近い電車に乗って、朝日を背にする席に座り、のんびりと本を読んで、7時半から開いている学食に入る。「100円朝食」という桁を間違えたようなメニューと、まばらに座っている学生たちを横目に見ながら本の続きを読む。そうして1限が始まるのを待つ。
 そういうリズムが一旦定着すると、大学生活というのは思ったよりも暇だった。
 2年目から実験で忙しくなるから、今のうちに単位を揃えておけ、ということを聞いていたのだが、講義内容はそれほど難しくはなく、普通に授業に出ていればどうにでもなりそうだった。
「有限のキャパシティを皆で分け合うんだから、他人と違うリズムで生きる方が得」
 というのが前々からの持論だった。
 それを西田にしだに言ったのは、確か高校2年の時だったと思う。