【動画付き】「美しすぎる太夫」豊竹咲寿太夫、肉体美の秘訣は超ストイックな“文楽漬け”生活!?

そして、僕たちは舞台に立っている。

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大阪上方発祥の古典芸能・人形浄瑠璃文楽。太夫、三味線弾き、人形遣いによる三位一体の真骨頂とも言える芸術に、今、再び注目が集まっています。その立役者が、豊竹咲寿太夫とよたけさきじゅだゆうさん。「美しすぎる文楽太夫」と称される33歳の太夫の日常生活は、文楽一色! 中学校1年生で初舞台に立ち、芸歴は約19年というキャリアの持ち主にして、文楽の未来を背負う次世代スターのチャーミングすぎる素顔に迫ります。

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文楽って、ご存じでしょうか

 僕は文楽ぶんらく太夫たゆうです
 配役された演目に登場する全ての役を声を使い分けて演じ、ト書きと呼ばれる台詞せりふ以外の文章も語ります。独演で大げさに小説を朗読している俳優をイメージしてもらうのがいいかもしれません。
 ところで、人形浄瑠璃じょうるり、文楽をご存じでしょうか。
 太夫・三味線弾しゃみせんひき・人形遣にんぎょうづかいの三業が一つになることで完成する上方発祥の古典芸能で、大阪出身の僕にとって文楽は地元の人形劇のようなものです。小さな頃から舞台鑑賞好きな祖母に連れられて内容も分からず観ていた身近な芸能ですが、ご存じでない方には何がなんだか分かりませんよね。なのでこの場を借りて、簡単に説明させてください。
 浄瑠璃とは、語り手が口でストーリーを語って聞かせる語り物です。そこに三味線が加わり、江戸時代に竹本義太夫たけもとぎだゆうという人が道頓堀に竹本座という劇場を建て、浄瑠璃に人形劇を合わせた人形浄瑠璃を始めました。竹本義太夫が大人気を博し、竹本座と彼の弟子が作った豊竹とよたけ座は隆盛を極め、浄瑠璃は義太夫節とも呼ばれるようになります。それらがなくなった後、ようやく芝居小屋に政府の認可がおりたのは明治に入った四代目植村文楽軒うえむらぶんらくけんの時代。人形浄瑠璃文楽座が誕生し、文楽という名称が人形浄瑠璃を指すようになったのです。
 ちなみに太夫とは語り手の職業名で、太夫という業に就く者は名前の最後に〇〇太夫と添えます。義太夫の場合は、「義」太夫で、私の場合は、「咲寿」太夫というわけですね。
 太夫と三味線弾きが対等に浄瑠璃を演奏して義太夫節を組み立て、人形遣いは一体の人形を三人で遣います。誰かが主導権を握っているわけではなく、三業それぞれが専門の仕事をして、舞台で勝手に息が合うことが肝要で、三位一体であることが大事です。
 私は中学2年生で初舞台に立ち、今33歳なので芸歴は約19年ですが、演目の山場の重要な部分である「切場きりば」を配役されるのが60歳くらい、50歳でも怒られつつようやく中堅という文楽の世界では、まだまだひよっこです。亀のようにゆっくり進んでいくしかありませんが、その分長く活躍できますし、常に自分を磨きながら、挑戦を続けられる芸能です。舞台人として全力でお客さまに作品を届けることを第一義に、いつか皆さんの日常生活に文楽が自然に溶け込んでもらえたらという願いを込めて、Twitterやブログで文楽の情報発信もしています。まさに文楽漬けの日々です。