「白馬に乗った王子様は幻」乳がん、離婚で信じるものを失った「南果歩」がつらい経験を隠さない理由

そして、僕たちは舞台に立っている。

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幅広い役柄を自在に演じる女優・南果歩さん。精力的にお仕事に取り組む一方で、乳がん、離婚とプライベートでたくさんの激震がありました。それでも、ご自身に起きたことを包み隠さず発信してきたその想い、そして生き方を語ります。

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私の経験が同じ状況にいる人へのエールになれば

 今のモットーは、自分で自分を幸せにすること。他力本願はもうやめました。白馬に乗った王子様なんて、どこにもいないんです。そんなものは幻です。
 私が乳がんやうつ病になったこと、二度の離婚、そして在日コリアン三世であることなどを公にしているのは、発信することで、たとえ直接ではなくても誰かと繋がっていけると信じているからです。私の経験が同じ状況にいる人へのエールになればなと願ってやみません。
 2016年にステージ1で乳がんが見つかった時、まずは標準治療を受けました。病気に関する知識はなかったし、何よりドラマのお仕事が立て込んでいたから。手術、ホルモン治療、抗がん剤治療を終え、仕事が一段落した後、ようやく身体の不調に気づきました。仕事をやりきらなければと張りつめていた時は、自分の身体の変調に気づかなかったんですね。幸い時間ができたので、がんのことを勉強しました。そしてセカンドオピニオンに耳を傾け、標準治療は一旦やめて、別の治療法に移行したんです。
 がんは早期発見が何より。けどみんな自分だけは大丈夫って過信してしまうから、もし私のメッセージが誰かに届いて、検診を受ける女性が増えるのなら、こんなにうれしいことはありません。
 身体と同じように心の不調に気付かない時もあります。私も、辛いかどうか、何がなんだか分からなくなったことがあります。
 人間の心身ってうまくできていて、一か所しか痛みを感じないんですって。だから頭痛と腹痛は同時には起こらない、痛みは一番辛いところに感じるんです。それは心も同じで、辛いことさえ認識できないほど負荷がある時に、それ以上に苦しいと感じられる出来事が起きると一瞬心が無になってしまう。そして、感覚が戻ると、新たな苦しみをきちんと認識できる。そんな気がします。
 私は2017年春にうつ病と診断されました。そして数週間後に渡米しました。その状況から逃げました。信じられるものを失ったからです。どこに行くべきかなんて分からなかったけれども、ここにはいられないということだけは分かったから。そういう自分の感覚は信じたほうがいい、きっと。