歌舞伎俳優中村歌昇がぼろぼろ泣いた朗読作品
更新
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累計960万部を突破した畠中恵さんの人気ファンタジー時代小説「しゃばけ」シリーズ! 20周年を迎えた2021年7月から、シリーズ各巻が花形歌舞伎俳優の朗読で続々とAudibleでオーディオブック化されています。第20弾である『もういちど』の朗読を担当されたのは、歌舞伎界の若きホープ中村歌昇丈。息子たちの父として、一人の俳優として、真摯に歌舞伎と対峙する覚悟を語ります。
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歌舞伎に必死にしがみつく
2022年9月、歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」で、長男の五代目中村種太郎と次男の初代中村秀乃介が初舞台を踏みました。弟(中村種之助)からは、「自分に甘くて、子供に厳しい」と言われますが、歌舞伎俳優として、息子たちに厳しく指導しているわけではありません。
舞台にあがり、お客様の前でお仕事をする時、大人も子供も関係ありません。中途半端な気持ちで立って欲しくないので、以前よりは自然に厳しくなりましたね。そして、歌舞伎に出演することで、一生懸命ひとつのことに取り組む姿勢を学んで欲しい。歌舞伎俳優としてより、人間として、とても大事なことだと思うので。それに、子役のうちはお芝居が上手かどうかは、大きな事ではない。
僕はまだまだ自分自身を磨かなければなりませんので、歌舞伎に必死にしがみついています。僕が小さな頃、父(三代目中村又五郎)が舞台に立っている姿に影響を受けたので、息子たちもそうであって欲しいですしね。もちろん彼らの行動全ての責任は僕にあるので叱咤激励はしますが、父をはじめ、教えてくださる方がたくさんいるので、僕はありがたく自分自身に集中させていただいております。
息子たちが将来、歌舞伎の世界で生きていくかどうかは、彼らが決めればよくて、僕にこだわりはありません。僕は、ある時に歌舞伎が好きになったから歌舞伎俳優の道を志しました。けど、好きなこと=仕事の人、好きなことだからこそ仕事にはしない人、色々なタイプがいますよね。息子たちがもし僕と同じタイプだとしても、歌舞伎より好きなことがあったらそれを仕事にすればいいし、そうでないなら、それぞれに合った仕事に就けばいい、そう思っています。
ただ、その決断をする時までは親として、いくつもの未来の選択肢を提示しつつ、歌舞伎の道は簡単ではないことだけは伝えなければならないと思っています。だから、弟の言う通り、結果的に厳しくなってしまうのかもしれませんね。