裁判員が幼児虐待殺人の被告に共感?! 「八日目の蝉」の角田光代が犯罪事件の闇に迫る

テレビ・ラジオで取り上げられた本

2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 NHKラジオ第1の番組「ラジオ深夜便」(4月17日放送回)のコーナー「私のおすすめブックス」で作家の角田光代さん(49)の小説二作が取り上げられた。「私のおすすめブックス」は編集者の松田哲夫さん(68)が毎月1回お勧めの本を紹介するコーナー。この日は角田さんの『坂の途中の家』(朝日新聞出版)を「犯罪小説シリーズにまた傑作が誕生しました」と紹介。また『拳の先』(文藝春秋)もとりあげ「ボクシングというスポーツの奥深さに迫る物語」だと紹介した。

■裁判員が犯罪者に共感してしまう

 角田さんといえば『八日目の蝉』(中央公論新社)や『紙の月』(角川春樹事務所)など女性の犯罪を扱った小説がドラマ化され話題となっている。今作『坂の途中の家』は裁判員に選ばれた30代の女性が主人公。乳幼児を虐待し殺してしまった母親の境遇にいつしか自らを重ね合わせてしまう。松田さんは同作を「子どもが泣きやまない時の辛さ、子どもを育てることができるのか、という女性の気持ちがよく出ている。角田さんの良いところは追い詰められて行くが最後には光が見えてくる。安易なハッピーエンドではなく、励みになるようなラストシーンを用意してくれている。辛い面もあるが大事なことが書かれている小説だ」と評した。

■犯罪ドキュメントは趣味だったが……

 番組には角田さんも電話で出演。松田さんが角田さんの仕事場を訪ねた際、本棚に犯罪ドキュメントがたくさん並んでおり、それまでの角田さんの作風とは違い驚いたという。角田さんは「昔から犯罪を扱ったドキュメンタリー、ノンフィクションが好きで、趣味でよく読んでいます」と告白した。「『八日目の蝉』までは趣味と自分の書くものは分けていたのですが」と苦笑した。それまで角田さんは日常を描いた作品が多く「日常の生活を書く(作家だ)と言われていて、じゃあ事件を書こうと思った」と語る。そして「犯罪を書きたいというよりもその裏にあるものが書きたい。犯罪は裏にあるものの『器』になっている」と小説で犯罪を扱う意義を語った。

■次の小説は2019年か2020年

 角田さんはこの小説で言葉の不思議さ、あいまいさを書きたいと思ったとも語る。「同じ言葉でも使う人間や関係性において全く違う意味になってしまう。そのために舞台は言葉で進んでゆく裁判の小説にした。主人公が言葉をどう捉えてゆくか。主人公の心情に読者を引っ張り込みたかった」と読者が同作の登場人物に共感してしまう理由を解説した。また次回作についても語った。昨年角田さんは3年間小説を書かないと宣言した。「源氏物語」の現代語訳に取り組んでおり、小説の次回作は2019年か2020年に出せたらいいなと、今後の予定を明かした。

『坂の途中の家』は読売新聞、産経新聞、週刊新潮でも書評が掲載されており、それらは当サイトBook Bangの以下のページで読むことができる。

 読売新聞書評産経新聞書評週刊新潮書評

「ラジオ深夜便」はNHKラジオ第1にて毎日夜11時15分(祝日は11時10分)から放送中。「私のおすすめブックス」は月に一度日曜日の午後11時台に放送。

Book Bang編集部
2016年4月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ニュース