『坂の途中の家』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『坂の途中の家』角田光代著
[レビュアー] 産経新聞社
里沙子は刑事裁判の補充裁判員に選ばれた。担当することになったのは、30代の母親が生後8カ月の長女を浴槽に落として死なせ、殺人罪に問われた事件。法廷で明らかにされていく被告人の鬱屈した日々は、もうすぐ3歳になる娘がいる自分自身の体験と重なってしまう。〈浴室の湿気やにおい、裸足(はだし)の裏のタイルの感触までが浮かぶ。まるで自分が泣き止(や)まない赤ん坊を抱いてそこに立っていたかのように〉。もしかしたら、私が彼女だったかもしれない。娘を殺したかもしれない…。平凡な暮らしにひそんだ“恐怖”をえぐり出すサスペンス。(朝日新聞出版・1600円+税)