とある契約により、刑期前に出所した男 ミステリー賞総なめ作家の新作

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ニック・メイソンの第二の人生

『ニック・メイソンの第二の人生』

著者
スティーヴ・ハミルトン [著]/越前 敏弥 [訳]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784041027165
発売日
2016/06/18
価格
994円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

とある契約により、刑期前に出所した男 ミステリー賞総なめ作家の新作

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 五年前、長篇『解錠師』で海外のミステリー賞を総なめにし、日本でも「週刊文春ミステリーベスト10」や「このミステリーがすごい!」で第一位に輝いたスティーヴ・ハミルトン。その後の期待の大きさに怯(ひる)んだのか、なかなか次作が出てこなかったが、ついに出ました新シリーズ第一作。

 主役はムショ帰りの三〇男で、物語は彼の出所シーンから始まるが、出所即自由の身というわけではなかった。彼、ニック・メイソンは連邦捜査官殺しの罪で本来二五年の刑期だったが、五年余りで出ることが出来た。それは、故郷シカゴの裏社会を刑務所の中から支配するダライアス・コールに見込まれ、ある契約を交わしたおかげだった。

 メイソンはコールの用意した邸宅に住み、仕事も貰うが、本当の役目は別にあった。その内容は――読んでのお楽しみで、著者は例によって彼が交わした契約内容をすぐには明かさず、彼の過去や人間関係を小出しにしていく。逮捕当時、妻子のいたメイソンはふたりに会おうとするがなかなか果たせず、その一方で、彼を逮捕したシカゴ市警の刑事も彼の出所後の動向を追っていた。メイソンが契約を実行に移すとともに、彼と彼を取り巻く人々のドラマも深みを増していくのである。

 ポイントはそれをきっかけにSISという麻薬事件専門の特別捜査班が出張ってくること。シカゴといえば、サラ・パレツキーの女探偵V・I・ウォーショースキーものを始め、ミステリーの舞台としてはお馴染みだが、それより何より、禁酒法時代の顔役アル・カポネとエリオット・ネス率いる特捜班アンタッチャブルの対決劇を思い起こす人が多いのでは。本書の読みどころもその構図が今様に再現されるところにある。

 個人的に楽しみなのはメイソンの相棒役に、ちょっとゴツい犬(カネ・コルソという種類)が登場すること。今後の彼の活躍にも注目だ。

新潮社 週刊新潮
2016年7月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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