「国ぐるみの機能不全に陥った」日本各地に現れる一匹の犬 馳星周の直木賞受賞作『少年と犬』文庫版がベストセラー

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 4月11日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文庫第1位は『クスノキの番人』が獲得した。
 第2位は『少年と犬』。第3位は『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん6』となった。

 1位の『クスノキの番人』は東野圭吾さんが、2020年に発表した感動作。ふとしたきっかけで祈れば願いが叶うというクスノキの番人になることとなった主人公。不思議なクスノキに祈りに来る人々と接しながら、クスノキの秘密を知り成長していく。単行本刊行時、日本での発売と同じタイミングで、中国語簡体字版、中国語繁体字版、韓国語版の3つ言語に翻訳され現地で出版され、世界中で大きな話題となった作品。

 2位の『少年と犬』は2020年に第163回直木賞を受賞した馳星周さんの作品。一頭の犬がつなげる6話の短編が収録された連作集。主人公は雑種の犬「多聞」。物語は震災のあった東北から九州へと続き、多聞は助けを必要としている誰かのもとに、天の恩寵のように現れ去っていく。様々な問題を抱えた人々に多聞は寄り添い、救いを与える。馳さんの犬への愛情がたっぷりと感じられる一冊だ。書評家の杉江松恋さんは《関わるひとびとはみな、この時代を生きるがゆえの大きな問題を抱えている。老いや病の不安、男女の社会格差、貧困生活の残酷さといった罠(わな)に足を取られているのだ。二〇一〇年代に日本は国ぐるみの機能不全に陥った。その姿が、情景として切り取られていく諷刺(ふうし)小説でもある》と解説している。

1位『クスノキの番人』東野圭吾[著](実業之日本社)

「あなたにしてもらいたいこと、それはクスノキの番人です」不当解雇の腹いせに罪を犯し、逮捕された玲斗。そこへ弁護士が現れ、命令に従うなら釈放すると提案があった。その命令とは……。(実業之日本社ウェブサイトより)

2位『少年と犬』馳星周[著](文藝春秋)

傷つき、悩み惑う人々に寄り添う一匹の犬は、なぜかいつも南の方角に顔を向けていた。人と犬の、種を超えた深いきずなを描く感涙作。(文藝春秋ウェブサイトより)

3位『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん6』燦々SUN[著](KADOKAWA)

生徒会の威信を懸けて行われる征嶺学園の学園祭。全生徒がアーリャさんの劇的勝利に湧いた初日も終了し、秋嶺祭はいよいよ最終日に突入!恋にコスプレにバンド演奏、最高潮の盛り上がりを迎えるかに思われた最中に大事件が勃発!?何者かの策略によって学園祭が壊されようとする中、政近は陰謀を暴き騒動を治めるべくたった1人で動き出す――。「俺を信じて、待っててくれ。必ず、ライブは決行させる」「ええ、信じてる」思惑入り乱れる学園祭、政近はこの騒動を治めアーリャさんを輝く舞台へと誘えるのか!?大人気ロシアンJKとの青春ラブコメ。波乱の学園祭編、クライマックス!(KADOKAWAウェブサイトより)

4位『お探し物は図書室まで』青山美智子[著](ポプラ社)

5位『わたしの幸せな結婚』顎木あくみ[著](KADOKAWA)

6位『悩め医学生 泣くな研修医5』中山祐次郎[著](幻冬舎)

7位『流人道中記(上)』浅田次郎[著](中央公論新社)

8位『流人道中記(下)』浅田次郎[著](中央公論新社)

9位『ロスト・ケア』葉真中顕[著](光文社)

10位『神様の御用人 継いでゆく者』浅葉なつ[著](KADOKAWA)

〈文庫ランキング 4月11日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年4月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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