オバマ前大統領も絶賛、「夫」「妻」視点による恋愛小説

レビュー

10
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運命と復讐

『運命と復讐』

著者
ローレン・グロフ [著]/光野 多惠子 [訳]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784105901417
発売日
2017/09/29
価格
2,916円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

オバマ前大統領も絶賛した壮大なスケールの恋愛小説

[レビュアー] 佐久間文子(文芸ジャーナリスト)

 壮大なスケールの恋愛小説だ。描かれているのは現代に生きるすぐれて魅力的な男女の結婚だが、ふたりの人生と彼らを取り巻く人々の物語に、秘められた悲劇や復讐が古典劇のように織り交ぜられ、ギリシャ神話の「運命の神々と復讐の神々」を思わせる重厚なタイトルの印象を裏切らない。

 二部構成で、前半は夫の視点から、後半は妻の視点で描かれる。映画にもなった『ゴーン・ガール』でも二つの視点は交互に登場したが、夫の目で見た場合と妻の目で見た場合で、同じ場面の意味がまったく違ってくるのが面白い。

 人気者だが母親との間に問題を抱えるロットと、美貌だが孤独なマチルドは、大学で電撃的に出会って駆け落ち同然に結婚する。ロットの家は裕福だが、結婚に反対する母親からいっさいの財政的支援を断たれ、俳優をめざすロットをマチルドが懸命に支える。

 俳優としてのロットはなかなか芽が出ず、輝けるカップルだったふたりの間も次第にぎくしゃくし始める。表現者と、表現者を陰で支える配偶者との関係はいつの時代も難しい……ということが書かれているのは事実だけれど、物語はそこで終わらない。中盤から二転三転し、思いもよらない方向につき進んでいく。

 オペラの脚本を書くためにしばらく家を離れたロットが、帰宅したときに臭った生ゴミの臭い。パーティーで夫の親友がもらした不用意なひとこと。第一部のロットのパートを読みながらどこかに引っかかっていたかすかな違和の正体が、悲劇と復讐とが交錯する第二部で明らかになる。あれはこういうことだったのだと、新しいドアが開くたびゾクゾクさせられる。

 オバマ前大統領が本書を絶賛したらしいが、どんなに平凡に見える夫婦でも、夫の目からと妻の目から書いた物語を同じように一冊に合わせたら、大なり小なりゾクゾクさせられる一冊になるだろう。

新潮社 週刊新潮
2017年11月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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