欧文書体がキャラクターとして登場、毎日がちょっとだけ楽しくなる「擬人化マンガ」

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となりのヘルベチカ

『となりのヘルベチカ』

著者
芦谷國一 [著、イラスト]/山本政幸 [監修]
出版社
フィルムアート社
ジャンル
芸術・生活/芸術総記
ISBN
9784845918218
発売日
2019/09/26
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

あの雑誌にあのブランドも。 日常に溢れる“欧文書体”の物語

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 いま、文字を書くときには手書きよりもキーボード入力が優勢になり、明朝体など書体の名称も一般に知られている。しかしそれは日本の文字の話であって、欧文書体の名称をいくつも知っている人は(仕事上知っている人を除き)まだそう多くはないだろう。

 先日この本を書店の平台で見かけ、ハートを直撃されて即購入した。ニッポンのお家芸「擬人化マンガ」で欧文書体を知るという心にくい企画。書体はどれも、特徴あるイメージを背負っている。だから企業や商品名のロゴには、それぞれにふさわしい書体が選ばれているのだ。看板や商品パッケージなど、欧文書体を目にしない日はないから、書体を判別できるようになると毎日がちょっとだけ楽しくなる。この本には、欧文書体のなかでももっとも優等生的でみんなに親しまれる「ヘルベチカ」をはじめ、20種類以上の書体がマンガのキャラクターとして登場する。

 一つ一つの書体を紹介するマンガには、それぞれ解説と書体見本も付けられているし、なによりいいのは、われわれが日常目にする使用例がちゃんと紹介されていることだ。たとえば、「フルティガー」という書体は視認性が高いため、JR駅構内の誘導サインや東京メトロの駅名サインに使われている。モダンで華やかな「ディド」は雑誌『VOGUE』のタイトル文字に採用され、古代ローマの碑文を下敷きにした「トレイジャン」は、「ブルガリ」のロゴとなってブランドの歴史と風格を演出している。

 アメコミの吹き出し文字をもとに、子供向けのPCプログラムのために作られた「コミック・サン」は、のちにWindowsの標準フォントにもなった。英国の失読症団体が「一般に入手できる中で読みやすい書体のひとつ」と評価しているそうだ。暮らしの困難を軽減するのに一役買っている書体なんて、なんだかカッコいいではありませんか。

新潮社 週刊新潮
2019年12月5日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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