毎日のごはんから災害時の避難まで これから犬を飼う人が知っておくべきこと

レビュー

4
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

犬のための家庭の医学

『犬のための家庭の医学』

著者
野澤延行 [著]
出版社
山と渓谷社
ISBN
9784635590464
発売日
2019/12/16
価格
1,760円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

毎日のごはんから災害時の避難まで これから犬を飼う人が知っておくべきこと

[レビュアー] 澤田真一(ノンフィクション作家)

 明日から犬を飼おう。
 もちろん、生き物を飼うわけだから「何となく、気紛れ」では困るのだが、飼い主が責任感を持って取り組めば「犬を飼う」という行為は立派な文明活動である。有史以来、人類は犬と共に暮らしてきた。犬は使役動物以上の存在であり、即ち人間の家族に等しい存在だ。
 だからこそ、「これから犬を飼いたいけれど」と思案している人に向けた本が必要になる。
 筆者が此度目を通したのは、獣医師の野澤延行氏が手掛けた『犬のための家庭の医学』(山と溪谷社)である。とりあえず、これを読破しておけば「飼い犬にとって必要なモノやコト」を把握することができる。

長寿化した犬


犬のからだをつくるのは、毎日のごはん。質のよい食事が健康的なからだを育む。

 日本は今や「長寿大国」として、世界でも有名だ。
 筆者は最近、117歳の誕生日を迎えた日本人女性のニュースを目にしたが、今後も人類は超寿命の道を歩んでいくはずだ。医療が発達すれば、人の一生も当然長くなる。
 そして、それは犬も同様だ。

“人と犬は一万年以上もの前からともに暮らし、特別な信頼関係を築いてきました。はじめは使役として飼われていましたが、いまでは互いに敬う家族にまで発展しました。そして犬の平均寿命は近年になって15歳を超え、格段に長生きするようになりました。”(『犬のための家庭の医学』より引用)

 この記述で注目すべきは「犬の平均寿命は近年になって15歳を超え」という部分である。
 平均寿命が15歳ということは、それ以上長生きする犬もいるということだ。昔なら「15歳まで生きたら奇跡的な大往生」のはずだったが、現代ではそれは珍しいことではない。これもまた、医療やペットケアの発達によるものだ。
 が、犬の寿命が延びた分だけ飼い主は健康維持に気を遣わなければならない。

ドッグフードの「イロハ」


食生活を知ってほしい。犬は雑食性に近い肉食。

 さて、今日から犬を飼うとする。
 まず最初に突き当たる疑問は、食事である。人も犬も、食うものを食わなければ死んでしまう。一口に「ドッグフード」とは言うが、何をどれだけ与えればいいのか分からない。

“犬のごはんと言えばドッグフード。手に入りやすく、栄養のバランスもよく、手軽なことから多くの人が愛犬のためにドッグフードを選んでいます。ただ、種類が多すぎて「どれを選んだらいいのかわからない」という人も多いようです。(中略)犬が主食として毎日食べるのに適したフードは、「総合栄養食」と表記されたタイプ。犬が必要とする栄養基準を満たしているとペットフード公正取引協議会が証明したフードで、新鮮な水と一緒に与えるだけで健康を維持することができるように理想的な栄養素がバランスよく調製されています。”(『犬のための家庭の医学』より引用)

 当然のことだが、ドッグフードにもラベル表記というものがある。それに目を通して、個々の飼い犬に合ったフードを選ぼうというのが上の文章の主旨だ。
 さらに、フードの量にも注意が必要である。

“あればあるだけ食べてしまうのが、犬の習性。しかもあまり噛まずに飲み込む早食いです。群れで狩りをしていた野生時代、狩りの成功率は高くなく、獲物が獲れても仲間に先に食べられてしまうこともあったため、このような食べ方になったと考えられています。”(『犬のための家庭の医学』より引用)

 だからこそ、食べるフードの量は飼い主が調節しなければならない。人間と同じように、犬も「食べ過ぎによる肥満」という問題を抱えてしまうことがあるのだ。

災害発生時の避難

 このような感じで、『犬のための家庭の医学』はこれから犬を飼う人のためのハウツー本という色合いが強い。
 散歩の仕方やトイレ、家の中の危険、メンタルケア、高齢犬の介護等、この本には即座に役立つ知識が詰まっている。一方で、イラストやペットアプリ『ドコノコ』に投稿された写真を多用していることもあり、ぱっと見ても難解さは一切感じられない。
 さて、この本の中で筆者がとくに気になったのは「一緒に避難できますか」という項目である。


一緒に避難するための、犬のための防災グッズ。

 一昨年、去年と日本では自然災害が相次いだ。去年は危険な台風が相次いで日本に上陸し、我々の住む国に大きな爪痕を残した。
 もしもこのような災害に見舞われた時、住人はペットと共に避難できるのか?

 環境省の「災害時におけるペットの救護ガイドライン」や公共社団法人東京都獣医師会発行の『ペット防災BOOK』では「避難時にはペットとの『同行避難』」と推奨しています。同行避難とはペットと一緒に避難すること。まず、ペットは連れて逃げていいことを、知っておきましょう。(『犬のための家庭の医学』より引用)

 それと同時に、飼い主が気をつけておかねばならないこともある。疫病対策だ。

“忘れてはいけないのは、ワクチン接種やノミ・ダニ駆除薬の服用・投与です。知らない場所での生活で免疫力が下がって体調を崩しやすいこともあり、病気や害虫をうつされたり、うつしたりしないためのマナーでもあります。”(『犬のための家庭の医学』より引用)

 避難所に愛犬を入れる際、そこから疫病の原因となるノミやダニが発生しないよう日頃からケアする必要がある。これは飼い主にとっての義務というべきだろう。
 ちなみに、環境省や東京都獣医師会がペットとの同行避難を推奨しているのは事実だが、一方で「同伴避難」に対応している避難所は多くないのが現状だ。

“同行避難が推奨されていますが、これはペットと一緒に安全な場所まで避難するまでの行為のこと。避難所でペットを飼育できる「同伴避難」とは異なります。(中略)同行避難と同伴避難の違いを理解し、近所の避難所はどんな対応をしているのか、あらかじめ確認しておく必要があります。”(『犬のための家庭の医学』より引用)

 これもまた、飼い主の「日頃の気遣い」が問われる部分である。

山と溪谷社
2020年1月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

山と溪谷社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加