メフィスト賞からまたスゴイ才能が現れた! 司法試験合格&小説家デビューを果たした著者の、新時代の法廷ミステリー『法廷遊戯』

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法廷遊戯

『法廷遊戯』

著者
五十嵐 律人 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784065184479
発売日
2020/07/15
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

メフィスト賞からまたスゴイ才能が現れた! 司法試験合格&小説家デビューを果たした著者の、新時代の法廷ミステリー『法廷遊戯』

[文] カドブン

法曹を目指す三人の若者。一人は弁護士になり、一人は被告になり、一人は謎を残して死んだ――。第六十二回メフィスト賞を受賞した『法廷遊戯』は、清新な法廷ミステリーとして絶賛を受け、話題となっています。自身も司法試験に合格し、現在司法修習生であるという著者の五十嵐さんにお話を伺いました。

――メフィスト賞で法廷モノということで、どのような作品か注目していましたが、法律を駆使したどんでん返しの仕掛けと、三人の主要人物の人間ドラマが見事に融合していて、とても新人とは思えない筆力に驚きました。実際に五十嵐さんも、司法試験に合格されているとか。

五十嵐:はい。東北大学の法学部を卒業後、ロースクールに進学して四年前に司法試験に合格しました。ですが、すぐに法曹界にいくのには迷いがあったんです。裁判官、検事、弁護士、それぞれ相当な激務ですし、このままでよいのか、本当に自分がしたいことは何だろう、と。そんなとき、森博嗣さんの『すべてがFになる』を読んで感動し、自分は中学生の頃から小説を書きたかったんじゃないか、と思い出したんです。そこで、その年は司法修習にはいかず、別の仕事をしながら本格的に新人賞への応募を始めました。

――そして見事に、森博嗣さんと同じメフィスト賞を『法廷遊戯』で射止められた、と。

五十嵐:はい。他の新人賞にも応募していたので、一途な投稿者ではなかったのですが(笑)。実は、KADOKAWAさんの横溝正史ミステリ大賞にも応募していたんです。そのときは法学部の学生が主人公だったのですが、リーガル要素は少し付け足すくらいでした。その作品で落選していたので、このままじゃダメだと思い、それなら真正面から法廷モノで勝負してみようと。もともと司法試験を目指した理由に、単純に法律が好きでもっと勉強したいという思いが強くあり、結果的にそれを活かせたのかなと思います。

――リーガル・ミステリーはもともとお好きだったのでしょうか?

五十嵐:法律が身近にありすぎたこともあって、ミステリーのジャンルとしてはあまり意識していませんでした。本格ミステリが好きだったので、まずは謎を作り、そこに法律を当てはめていったら自然とそうなった、という感じです。実は、最初の頃は新しい密室トリックを生み出すことに憧れていました。ですが、考えてみるとどうも現実的じゃない。じゃあどうするかを考えたとき、動機ならミステリーに限らず色んな小説に通じるものだと気づいて、そこで新しさが出せたら、と思うようになりました。

――本作は、法曹を目指す若者たちを描いた第一部と、弁護士となった主人公が、第一部の最後で起きた事件の被告人を弁護する法廷劇の第二部に分かれていますね。

五十嵐:私はプロットを書かずに書き始めるタイプなのですが、当初は第一部の終わりまでしか考えていませんでした。終盤のどんでん返しも、最初は別の形だったのですが、これだと誰でも想像がつくと思い、途中で変えていきました(笑)。

――執筆される上で苦労されたこと、逆に手ごたえを感じたポイントはありますか?

五十嵐:一番苦労したのは、「法律的に嘘をつかない」ことですね。とはいえフィクションとして面白くないといけないので、その両立が難しかったです。手ごたえを感じたところというより良かったことは、法律を主題に置きつつ、登場人物たちに三者三様の考え方を持たせ、何が正しく、何が正しくないのかという現実には割り切れない問題を描けたことでしょうか。

――作中では、佐沼という食えない性格の住所不定の便利屋なども登場します。そういったサブキャラも含めて、登場人物が皆とても魅力的ですね。

五十嵐:ありがとうございます。私の好きな伊坂幸太郎さんの小説でも、脇にいる人物たちがとても魅力的なので、あまり型通りの脇役は書きたくなかったんです。

――今後のご予定は?

五十嵐:二作目、三作目の第一稿がすでに書きあがっています。今回の作品を書きながら、改めて弁護士という仕事に魅力を感じたので、実人生でも、これからは弁護士として身を立てつつ、作家業との二足の草鞋を目指していきたいと考えています。

――同世代で意識されている方はいらっしゃいますか?

五十嵐:あまり考えたことはないのですが……、自分が応募していた新人賞からデビューした方の動向は少し気になりますね。先ほども話した横溝正史ミステリ大賞は、最終選考で落選しているのですが、その年の候補者から、優秀賞を受賞した犬塚理人さんと、野性時代フロンティア文学賞を受賞した岩井圭也さんがデビューしているんです。

――お二人とも、KADOKAWAデビューの作家じゃないですか(笑)! ぜひ五十嵐さんも、弊社でリベンジを果たしてください。お待ちしています!

取材・文:小説 野性時代編集部

KADOKAWA カドブン
2020年9月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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