英会話は「話題が9割」。英語力以上に必要なスキルとは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
英語のトレーニングというと、フレーズや単語をたくさん暗記したり、音声をひたすら聞き流したり、というようなトレーニングをイメージする方も多いはず。
ところが通訳者・翻訳家である『一度読んだら絶対に忘れない英会話の教科書』(牧野智一 著、SBクリエイティブ)の著者によれば、そのようなトレーニングではいつまでたっても英語を使いこなせるようにはならないのだそうです。
もちろん数をこなすことは必要ですが、それでも英会話の学習にはきちんとした「方法論」があるというのです。つまり方法論をきちんと理解することが先決であり、数をこなすことはそのあと。
だとすれば気になるのはその方法論ですが、まず最初はスピーキングに集中するべきだといいます。
最初に、必ずスピーキングの基礎を身につける必要があります。リスニングの学習は、その次です。(中略)
スピーキングの基礎が身についた後でリスニングの学習に移ると、リスニングの力が驚くほど速く向上します。そして、スピーキングとリスニングの基礎ができ上がると、じつは、同時にリーディングやライティングの基礎まででき上がってしまうのです。
(「はじめに 『通訳者×英語講師』がつくった画期的英会話メソッド!」より)
この一連の流れを「英語学習の絶対法則」だと考えているという著者の英会話メソッドには、通訳の現場に30年以上立ち続けるなかで培った“通訳のスキル”が散りばめられているそう。
とはいえそれを初級者向けにアレンジしているため、英語が苦手な人でもすぐに実践することが可能。そんな本書のなかから、きょうは第4章「コミュニケーション」に焦点を当ててみたいと思います。
スピーキングとリスニングには問題がないのに、ネイティブとの会話がうまくいかないという人の多くは、コミュニケーションについて勉強不足だったり、間違った理解をしていることが多いというのです。
英会話は、話題が9割
著者はここで、日常の英会話は「話題が9割」だといっても過言ではないと述べています。経験上、英会話が上手な人はたいてい話題が豊富だということです。
英語に限らずどんな言語であっても、その言語を使う人たちの文化が密接に関わっているもの。したがって、基本ルールや文法、フレーズのみならず、文化や価値観を学ぶことも不可欠。それも、英会話上達のための重要なポイントだということです。
著者が提唱している「話題のつくり方」を確認してみましょう。
共通の話題が見つかりやすくなる6つの質問
① 「出身地」を聞く/Where are you from?
② 「趣味」を聞く/What’s your hobby?
③ 「好きな食べ物」を聞く/What’s your favorite food?
④ 「好きな映画」を聞く/What’s your favorite movie?
⑤ 「好きな音楽」を聞く/What kind of music do you like?
⑥ 「旅行に行ってみたい場所」を聞く/Where do you want to go on a trip?
(171ページより)
外国人と盛り上がる話題
① 日本各地の「名所」
② 日本各地の「名産物」
③ 日本各地の「気候」
④ 日本各地の「風習」
⑤ 「漢字」の話
(171ページより)
外国人と話してはいけないタブーな話題
① 政治
② 宗教
③ 特定の国や地域の悪口
(171ページより)
英語と日本語の違い
違い① 英語は「結論→理由」
違い② 英語特有の「I」と「You」の使い分け
違い③ 英語圏では、基本的に社交辞令は不要
違い④ 「個人のプライバシーと権利」の基本的な考え方
(171ページより)
これらを理解しておくだけでも、会話についての不安感はある程度解消できそうです。(170ページより)
英会話が上手な人は話題が豊富
英会話が上手な人は、会話のスキルが高いというよりも、話題が豊富なことが多いそうです。つまり話題が豊富な人は、会話のスキルも伸びていくものだということ。
そのため、話題をある程度持っておくことが重要。なんでも知っておく必要こそないものの、自分の興味や世間の流行り、起きている問題はある程度把握しておく必要があるわけです。
今話題になっていることについては、ひと通り記事を読むことが大切です。
毎日、私はインターネットでその日のスポーツや芸能、政治など、ひと通りトピックをチェックしています。(173ページより)
通訳をやっていると、通訳後の接待につきあってほしいといわれることもあるのだとか。そんなとき、接待の場で日本人が黙っていると、通訳の自分が先方の相手をしなければならないというのです。
そういうことがあるからこそ、最低限、相手の出身国でなにが話題になっているのかを調べておいて話を振ることが大切だという考え方。そうすれば、「よく知っているね」と話が弾む可能性が生まれるわけです。
せっかく英会話のスキルがあったとしても、「話題がなくて話せない」というのでは宝の持ち腐れというもの。スキルを活かすためにも、日ごろから「話題集め」を心がけておくことも大切であるようです。(172ページより)
著者はこれまで、英語学習について自信喪失している人に数え切れないほど出会ってきたそう。しかし、そういう人は才能がないのではなく、単に英語学習の正しい方法論を知らないだけだと断言しています。だからこそ、長い経験に裏づけられた本書のメソッドを参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: SBクリエイティブ