電車の中に動物がギッシリ……ペーパークラフトも楽しめる絵本『でんしゃがとおりまーす!』の作者に聞いた作品の秘密

インタビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

でんしゃが とおりまーす!

『でんしゃが とおりまーす!』

著者
オームラ トモコ [著]
出版社
株式会社 世界文化社
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784418228348
発売日
2022/07/19
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

通過電車が運ぶ一瞬のファンタジー! 『でんしゃがとおりまーす!』刊行記念・オームラトモコさんインタビュー

[文] 世界文化社

世界文化社は鉄道開業150周年に合わせ、電車をテーマにした絵本『でんしゃがとおりまーす!』を刊行いたしました。ゆうくんとお母さんが駅のホームで電車を待っていると、鳥や昆虫を乗せたオレンジ色の電車が通過。夢かと思っていたら今度は動物たちが乗った緑色の電車が通過していって…。通過電車が運ぶ一瞬のファンタジーに、子どもも大人も心奪われる物語です。刊行を記念して、作者のオームラトモコさんに絵本制作の舞台裏をたっぷりお聞きしました。

――どのようなきっかけでこのお話が生まれたのでしょうか?

最近は、電車のホームでの待ち時間はスマホなどを見て過ごす人が多いですが、私はあまり見ないので、ひたすらホームでぼんやりと待っています。駅によってはなかなか電車が停車せずにどんどん電車が通過していくので、「あー、また行ってしまった……」と横目で見ながら。

通過する電車は、音や風など体感的にはとても速く、急行や特急などは窓越しに見える車内のお客さんを肉眼で確認するのは意外と難しいです。

ある時、動物を運搬する車はあるけど、動物を運搬する電車ってない? と思いました。電車は車よりも大きいし、一度にたくさんの動物を運ぶことができるよね! と。それに、電車は箱状で気密性も高そうなので、水を入れて魚も運搬できるのでは? などと妄想し、だんだんといろいろな生き物を運びたくなって、このお話の原型を考えました。


ゆうくんとおかあさんが電車を待っていると……

――絵本に出てくる通過電車にはぎっしりといろいろな生き物が乗っています。「パタパタ電車」「ガオガオ電車」「スイスイ電車」、それぞれとても魅力的ですよね。

絵本の構成を考える際、まず主人公のゆうくん(人間)達が乗る電車以外は、3台の電車を通過させることに決めました。そこで、3種類に生き物を分けるのですが、最初は小さめの生き物からスタートした方がいいかなと思いました。「パタパタ電車」は昆虫と鳥。「ガオガオ電車」は動物。「スイスイ電車」は魚と水中で暮らす生き物で、イルカやクジラなども入れました。

「スイスイ電車」が通過した後、クジラの水しぶきがホームの人たちにふりかかるシーンがあるのですが、昔、ホームで電車から水しぶき少しがかかった経験があり、そこから発想しました。おそらく電車のクーラー設備上、使用している水かしら? と思っています。真相は謎ですが…。

――オームラさんが描く動物はリアルでありながら、表情豊かでかわいらしいところがとても魅力的です。動物を絵本で描くときにこだわっているところはありますか? また、今回の絵本の中でお気に入りの動物はいますか?

動物も昆虫もお魚も生き物は、人間と同じく感情があると思うので、言葉以外で表現するなら表情かなと。この絵本のお話では、生き物たちが電車に乗ってワクワクしながらお出かけしているので、動物たちにセリフはありませんが、みんながおしゃべりしているように見えたらいいなと思って描きました。

「スイスイ電車」が通過するシーンで、正面を向いているイルカは気に入っています。表情豊かな動物はたくさんいますが、イルカは笑顔が印象的だと思います。見た目と動きがとても好きなのはペンギンです。不器用そうに歩く姿がとても愛らしくいつまでも見ていられます。


水中で暮らす生き物が乗ったスイスイ電車

――小学生のころの夢は動物関係の仕事に就くことだったとお聞きしたことがあるのですが、幼いころから動物が好きだったのですか?

動物は種類問わず好きです。私が子どものころは、テレビで「動物番組」がたくさんあって、画面に出てくる動物がとにかくかわいく見えました。牧場などで動物たちと自由に触れあう大人たちが羨ましかった記憶があります(笑)。家庭の事情で犬や猫を飼えなかったのが、ますます動物への憧れにつながって絵本に動物がたくさん登場するのかもしれません。かろうじて、金魚などの観賞魚とセキセイインコは飼いましたよ。

――制作中に苦労されたことはありますか?

今回の絵本を作る際に電車のことを調べたりしたのですが、今まで何げなく乗っていた電車に自分はとても無知だったのだと痛感しました(苦笑)。例えば、車両のサイズや屋根上の構造、つり革の位置など、調べれば調べるほど奥深かったです。このお話では、ある程度リアリティを出したかったので、生き物と電車の大きさの対比は気をつけました。

――見どころやおすすめシーンを教えてください。

この絵本は、駅のホームを定点カメラのような視点で描いています。前半は電車が通過するシーンとホームの人たちシーンが交互に展開されています。ページをめくった後で、そういえば今の電車に何の生き物がいたっけ? などと気になれば、前のページに戻して読んでもいいですね。小さな生き物もたくさん登場しているので、どこにどんな生き物がいるのか絵で見て楽しんでいただけたら幸いです。また、観音開きのページでは、電車に乗ってきた生き物たちが全員集合しているので、ぜひ確認してみてください。

――観音開きのパノラマは100種類くらいの動物が出てきて、どの動物も気持ちよさそうに水遊びをしています。生物の多様性を感じるシーンですが、このシーンを描くときに意識されたことはありますか?

生き物と水とは切り離せない関係性なので、まずは水場に来たことが嬉しい! という感じが出せるように、生き物それぞれの表情や動きなどは気をつけました。このページでは、電車に乗ってやってきた生き物たちが全員集合しているので、一つ一つの種類をできるだけ分かりやすく確認できるように配置にはこだわりました。


電車に乗ってやってきた生き物たちが全員集合

――この絵本はカバーの裏面が動物電車のポスターになっていたり、帯の裏に「ガオガオ電車」のペーパークラフトがついていたりと、楽しめるおまけがいっぱいですね。


電車ポスターとガオガオ電車のクラフト

ポスター用に描いた電車は全体像で、それぞれ3車両が連結しています。絵本の本文に登場する電車はクローズアップされているため、スペース上、車両全体は見えません。実は観音開きのシーンで水遊びをしている生き物たちは、本文の通過電車には描かれていない親子などもいます。ポスターと観音開きのシーンに登場する生き物はだいたい同じ家族構成なので、小さくてなかなか見えづらいかもしれませんが、それぞれの絵を照らし合わせて見てみるのもおもしろいかもしれません。

クラフト電車は、立体の展開図を作る際につながる部分の絵柄を確認するのが難しかったです。車輪や窓がうまくつながらなかったり……。頭の中で立体を想像するのが苦手なので、ちゃんとつながるかプリントしてみて、試作工作してみたりしました。最終的にデザイナーさんで展開図を製作いただき、出来上がった絵本の帯で作ってみたら、完成写真と同じものができたので、子どものように感動しました! ポスターや電車クラフトで絵本の世界を広げて楽しんでもらえたらうれしいです。

世界文化社
2022年10月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

世界文化社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク