『さらば総理 歴代宰相通信簿』
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田中角栄の通信簿が抜群に高評価だったワケ
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
通信簿とは懐かしい。通知表とも言ったっけ。そう、あゆみという言い方も。著者は歴代宰相に、通信簿をつけたのです。
のっけはタイトルに『さらば総理』とあるように、安倍晋三です。亡くなって間もないことと、衝撃的な死だったからと思われます。
知らないことがたくさん出てきます。著者が直に会い、歯に衣着せぬ物言いで聞き出したことなどです。その一つが菅義偉の日本学術会議の問題で、6人の任命を拒否したものの、菅はついにその理由を語りませんでした。私は立腹し、ツイッターや落語のマクラで非難しましたが、本書においてなぜかが判明しました。
学術会議が候補者名簿を提出した時は安倍内閣だったのです。つまり安倍が拒否したのであり、総理の座を結果的に禅譲された形の菅がこれを引っくり返せるはずがない。それが著者の見立てなのです。そうか、それで今に至るも何も語らないのかと、大いに得心したのです。
田中角栄の通信簿が群を抜いて高評価です。それは特別対談に招かれた元自民党幹事長の二階俊博氏も同じで、氏は「だけど誰であってもね、田中角栄首相と比べるのはかわいそうだよ。比べものにならない。そんな枠には収まらないよ、田中角栄という政治家は。全然違う」と賛同しているのです。
田中角栄がハト派だというのは知っていました。改憲にも反対で、「田原君、戦争はだめだ」と著者に言うくだりに安堵しました。
通信簿は「決断力」「構想力」「発信力」「セクシーさ」「気配り」の5つに分かれ、それぞれが5点満点なのですが、著者は自分にも通信簿をつけています。それはかなり客観的なもので、宰相通信簿も信頼に足るものと思われるのです。
読者諸兄にも歴代宰相の通信簿をつけることをお勧めします。本書とどう合い、どう外れるのか。そんなところにも楽しみはあるのです。