高いのは「電気代」だけじゃない!再エネ補助金の負担は消費税1%超… 日本の「電力崩壊」とは?

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電力崩壊

『電力崩壊』

著者
竹内純子 [著]
出版社
日経BP 日本経済新聞出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784296115020
発売日
2022/12/26
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

いつ破綻してもおかしくはない 電力問題の全貌をコンパクトに解決

[レビュアー] 田中秀臣(上武大学教授)

「電気代が高くて驚いている」、そんな声が多い。また昨年の今頃は、大停電の可能性があると政府に脅され、国民あげての節電もした。太陽光パネルは景観を破壊するし、土砂崩れの原因にもなっている。原発再稼働も不透明なままだ。電力をめぐる話題は尽きることはない。そんな身近な電力の問題をクリアにまとめて議論しているのが本書の魅力だ。

 電気は大量に蓄えることができない「究極の生鮮品」だ。発電、送配電、小売りのそれぞれの段階で、日本固有の問題にも突き当たる。石油や天然ガスはほとんど海外に依存し、しかも海路はるばるコストをかけて運んでくる。また再生可能エネルギーも太陽光や風力発電に適した場所に乏しい。原発問題は、東日本大震災以降、過度の規制に直面し、事業者の負担が大きい分野になってもいる。電力の安定的な供給は、いつ破綻してもおかしくはない。著者はこれを政策の失敗とみている。

 特に東日本大震災以降、急激に再エネの利用や電力自由化が進んだ。そのあまりの速さに、国民もまた事業者も、そして決めた政府自身も振り回されている。電力の自由化によって家計の負担は減少しただろうか。自由化の恩恵などほとんどの国民は感じていない。同時に再エネ賦課金という、再エネ事業者への補助金のための「増税」を実施したからだ。その負担が大きい。まるで不況対策をしながら増税するのに似ている。いずれにせよ、再エネ賦課金は、現状では消費税1%を超える負担だ。将来的にはもっと上がる。しかし本書で指摘されているように、太陽光パネルの生産は中国に依存し、自国産業の育成に失敗した。天然ガスをロシアに依存したドイツが、エネルギー危機に陥ったのと似た将来が、台湾有事などできてもおかしくない。

 本書はきわめて目配りよく書かれ、電力問題の全貌をコンパクトに解説している。日本の電気代よりコスパが超いい。それだけは確かだ。

新潮社 週刊新潮
2023年3月16日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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