『語学書ベストセラー100冊を研究して「最強の英会話本」を作ってみました。』
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英会話をものにしたいなら、英単語は数より「深さ」と「使い方」を覚えるといいわけ
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
タイトルからもわかるとおり、『語学書ベストセラー100冊を研究して「最強の英会話本」を作ってみました』(武智さやか 著、Gakken)は、著者がこれまでに使った300冊以上の語学書のなかから100冊のベストセラーをピックアップし、それらに書かれている重要なポイントを厳選したという一冊。
さらには自身の学習と、英語講師としての指導経験も総動員することにより、最短ルートで英語が話せるようになっているのだそうです。つまり英語学習法を知るだけでなく、それを知ったうえでトレーニングを積むことができるということ。
なお100冊を選出するにあたっては、下記の条件を満たすことを重視したのだといいます。
・英語の勉強法やノウハウを提供している書籍
・平成元年以降(1980年代以降)に出版された本
・ベストセラーやロングセラーとして多くの方に読まれた本
(「はじめに」より)
こうした基準に基づき、語学書を手がけてきた編集者などの協力のもと、発行部数や増刷の回数などを調べて選出したということです。また、もうひとつのポイントは、「英語で自分がいいたいことがいえるようになること」をゴールに設定している点。そこで、やるべきこととして以下の3ステップを設定しています。
【ステップ1】単語をたくさん覚えるのをやめる
【ステップ2】日本語を英語に訳すのをやめる
【ステップ3】文法を学ぶのを止める
(「はじめに」より)
きょうはスタートラインであるステップ1のなかから、「単語は数より深さ」に焦点を当ててみたいと思います。
単語は、これ以上覚えなくていい
「英語が話せるようになりたい」と思っているにもかかわらず、「語彙力がないから話せない」「自分のいいたいことが口からなかなか出てこない」と悩んでいる方も少なくないはず。
しかし著者によれば、そんな方のほとんどが、実は話すのに充分な単語の知識を持っているのだとか。
つまり、「単語の知識があるのに、それを使いこなすことができていない」だけだということ。
そして、その原因は2つあるようです。
まずひとつ目は、単語を“深く”知らないこと。著者が確認した100冊のベストセラーのなかには、「単語は中学レベルで大丈夫」だと書かれているものが多かったというのです。
実際に『海外ドラマはたった350の単語でできている』(Cozy/西東社)には、海外ドラマを分析した結果、超基本の350の単語があれば日常会話ができ、その単語の90%以上が中学の時に習うものだと書かれていました。
つまり、本書を読んでくださっている方の多くが、既に十分会話ができるだけの単語に出会っているのです。
それでも「会話ができない」「うまく自分の言いたいことが伝えられない…」と悩む原因は、単にその知っている単語を深く知らないことにあるのです。(18〜19ページより)
たとえばfireという単語の意味を聞かれたとしたら、ほとんどの方が「火」という日本語を思いつくのではないでしょうか? ところがfireには「解雇する」という意味もあり、実際に会話でも文章中でもよく使われています。したがって、それを知らないとまったく理解できないわけです。
こんなふうに1つの単語にはいくつも意味があり、当たり前に知っている単語でも実は別の意味が隠されていることがあるのです。
そのため、1つの単語を深く知っておくことが、語彙力を増やす上で飛ばしてはいけない重要な工程となります。(19〜20ページより)
語彙力を増やそうとすると、つい単語の数を増やそうとしてしまいがち。でも実際のところ、「単語は数よりも深さ」だということ。以下の英単語についても同じで、( )内の意味も英会話ではよく使われるものだといいます。
break(中断する、(お金を)くずす)/catch((バスや飛行機に)間に合う)/come(捗る)/get(〜を理解する)/give((病気を)うつす)/hear(〜を理解する)/keep((日記・記録・メモを継続的に)つける・とる)/look(〜の方向を向いている)/mean(意地悪な、ケチな)/meet((義務・要求に)応じる・満たす)(20ページより)
どれも比較的簡単で基本的な単語ばかり。ここからも、「広く浅く」より「狭く深く」が重要であることがわかります。(18ページより)
単語の使い方知り、うまくコーディネートする
「単語の知識があるのに使いこなすことができていない」もうひとつの原因は、単語の使い方を知らないこと。
単語は文章を組み立てるためのパーツですが、英会話が苦手な方は、そのパーツを単体で覚えたとしても、それらを文章のなかでどう使ったらいいのかがわからない可能性が。そのため、文章を組み立てることができないというのです。
分かりやすく、ファッションに例えてみたいと思います。
ブランド品のシャツとパンツ、そして靴を買ったとしましょう。「そのシャツを、持っているどのパンツに合わせようか?」「買った靴は、家にあるどの服に合うかな?」といろいろと考えると思いますが、うまくコーディネートできなければ、その服や靴を使いこなせないですよね。1つ1つのアイテムがよいものでも、コーディネート次第では台無しになってしまいます。(21ページより)
それは単語でも同じだ。せっかく意味を覚えても、「この場面ではこの単語を使おう」とコーディネートすることができなければ、単語はその価値を充分に発揮せずに終わってしまうわけです。決して、覚えたら終わりではないということなのでしょう。(20ページより)
英語学習がうまく行かないと悩む方の9割が、しなくてもいいこと、レベルに合っていないことをしてしまっていると著者は指摘しています。だから遠回りをして、時間を無駄にしてしまうのだと。
つまり、そういう方をひとりでもなくし、早く英会話を習得してほしいとの思いが本書には込められているわけです。挫折することなく上達を楽しむために、手にとってみるといいかもしれません。
Source: Gakken