『学校で育むアナキズム』
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<書評>『学校で育むアナキズム』池田賢市 著
[レビュアー] 荻原魚雷(エッセイスト)
◆安心して はみ出せる場に
アナキズム=無政府主義は無秩序をもたらす過激な思想とよく誤解される。本来のアナキズムは強権を否定し、個の自由を重視する「相互扶助」の思想である。
子どもを従わせる教育か、子どもに任せる教育か。私語を禁じたり、規則(ブラック校則)で縛ったり、苛烈(かれつ)な競争を強いたりする教育のあり方は正しいのか。子どもはもっと自分本位に学び、遊び、おしゃべりしたほうがいいのではないか。
学歴主義や教師の労働環境など、「アナキズム的教育」の前には立ちはだかる壁はいくつもある。子どもたちの家庭環境のちがいによる教育格差の問題は残るだろう。
著者は子どもたちが学校への「従属性」を脱し、安心して「はみ出す」ことができる教育の場を提案し、「ともに学ぶ」環境を模索する。
日本の公教育のあり方をアナキズムの観点から検討すると、学校だけでなく、現代社会がとらわれている窮屈な思い込みが見えてくる。
(新泉社・2200円)
1962年生まれ。中央大教授。『フランスの移民と学校教育』。
◆もう1冊
『学びの本質を解きほぐす』池田賢市著(新泉社)。子どもを追い詰める学校教育の正体。