『風立ちぬ』真のモデルは宮崎駿の父だった? 「ジブリ」アニメ10作を独自の視点で解説

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誰も知らないジブリアニメの世界

『誰も知らないジブリアニメの世界』

著者
岡田斗司夫 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784815617776
発売日
2023/04/07
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

新作公開を前に宮崎アニメを俯瞰

[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)

 今年7月、宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』が公開される予定だ。現時点で内容はまだ公表されていない。しかし、前作『風立ちぬ』が堀辰雄の小説を映画化したものではなかったように、今回も吉野源三郎の作品がそのまま描かれることはないはずだ。

 10年ぶりの宮崎作品に期待が高まる中、予習もしくはウォーミングアップに最適な一冊が登場した。岡田斗司夫『誰も知らないジブリアニメの世界』である。

 制作会社ガイナックスを設立し、『ふしぎの海のナディア』などのヒットアニメを生んだ岡田。「オタキング」の名で親しまれ、プロデューサーや評論家として活動してきた。本書では、宮崎駿がジブリで監督した長編アニメ全10作について、「場面」や「キャラクター」に込めた意図などを独自の視点で解説していく。

 人間と「技術」をめぐる物語『風の谷のナウシカ』。「才能と時代との戦い」が裏テーマだったという『魔女の宅急便』。黒澤明監督『七人の侍』など往年の時代劇へのアンサーである『もののけ姫』。宮崎駿が私小説的な要素を盛り込んだ『千と千尋の神隠し』。そして『風立ちぬ』の真のモデルが、宮崎自身の父親であることも指摘する。

 さらに岡田は、宮崎駿の哲学が途中で変化したことを見逃さない。「重要なのは状況を引き受ける以上に、状況のなかでいかに生きていくか」である、というシフトチェンジだ。果たして新作もまたその延長線上にあるのか、注目したい。

新潮社 週刊新潮
2023年6月8日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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