幸福度をあげる考え方「ポジティブ・シフト」を手に入れる方法〜まずは自然を味方につける!

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幸福度をあげる考え方「ポジティブ・シフト」を手に入れる方法〜まずは自然を味方につける!

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ポジティブ・シフト 心理学が明かす幸福・健康・長寿につながる心の持ち方』(キャサリン・A・サンダーソン 著、本多明生 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、「ポジティブなマインドセットをいつの間にか自然に身につけている人」はたしかに存在すると認めています。

そのような人たちは、困難な日々のなかにもなんらかの希望の光を見つけ、幸せで健康的な生活を送っているのだと。

私も含め、そうではない人は、このような楽観的な世界観を身につけるためには、時間と労力が求められます。

悲観的な思考ではなく、希望の光を見つけ出す明るい思考ができるように、悪い方でなく良い方に向かう行動がとれるように(例えば、アイスクリーム容器の底にある残り物に幸せを見つけるのではなく、楽しいときこそ、元気よく自然のなかを散歩しようとするように)、自分を変えていかなければいけないのです。(「はじめに」より)

そのため幸せを得るために苦心している人もいるわけですが、よいニュースもあると著者は述べています。どんな性格の人でも、自分自身や世の中に対する考え方を少し変えるだけで、より大きな幸せと健康を手に入れることができるというのです。

そしてここでは、作家のエリザベス・ギルバートによる2006年の回顧録『食べて、祈って、恋をして』の一部が引用されています。

幸福は日々の努力の積み重ねの延長線上にある。あなたはそれを闘いとらなければ、努力によってもぎとらねばならない。(中略)自分にとって幸せとは何かをつねに問い、それを表明しなければならない。そして、幸福な状態に達したら、それを維持することに手を抜いてはならない。永遠の幸福に向かって泳ぎ続けることに、その頂点に浮かび続けることに全力を注がなければならない。(「はじめに」より)

ネガティブな思考をやめ、自分がすでに得ているよいことに注目し、思考を変えていけば、必ずポジティブな考え方、楽観的な思考を得ることができるという考え方。

でも、そのためにはマインドセットを変える方法をさまざまな角度から検証するべきかもしれません。そこできょうは第3部「マインドセットを変える」のなかから、「[第9章]自然環境が心と身体に良い理由」に注目してみたいと思います。

自然が心に与えるよい影響

多くの人にとって、自然を体験することや想像することはとても重要。その結果、エネルギッシュで、安らかで、生き生きとした気持ちになれるからです。私たちが、海が見えるホテルの部屋や、庭のある家にたくさんのお金を支払うのはそのため。

ある研究においては、自然の恩恵を定量化するべく、研究参加者にさまざまな状況下で自分がどう感じるかを想像してもらったのだそうです。ここで紹介されているのは、そのなかの2つの状況。

・あなたと友人は近代的なビルの長い廊下を一緒に元気よく歩いています。

・あなたと友人のカップルは地元の公園の芝生の上で一緒に運動しています。

(235〜236ページより)

どちらの状況も、「友人と過ごす」「体を動かす」というよく似た内容。しかし研究参加者は、どちらの状況を想像するのかによって異なる感情を抱いたのだそうです。とくに、外で過ごすことを想像した研究参加者は、エネルギッシュで、覚醒度が高く、生き生きしているなど、より高いレベルの活力を感じたことが報告されているというのです。

一方、もうひとつの研究では、自然の風景写真と自然ではない風景写真のどちらかを研究参加者に見てもらったそう。するとこの研究でも、自然の風景写真を見た研究参加者は、自然以外の風景写真を見た研究参加者よりも高水準の活力を報告したのだといいます。

自然が幸福感にもたらす効果は、外で過ごすことを想像したり、写真を見たりするだけではなく、実際に外で過ごすことでより強く得られるもの。外の景色が見えない室内を歩くより、川のそばにある並木道を15分歩くだけで、活力と覚醒度が高くなるわけです。(235ページより)

自然と暮らすことのメリット

自然は、現実の世界においてどのように幸福感を生み出しているのか?

このことを突き詰めるため、ある研究では英国に住む1万人以上の研究参加者のデータを調べたのだそうです。このデータには居住地に関する情報も含まれており、庭や公園、水辺など、研究参加者が日常的に接している自然の「量」を測定することができたようです。

重要なポイントは、このデータが18年間にわたって毎日収集されていたこと。そのため研究者は、新しい場所への引越しが、気分や生活満足感とどう関連しているのかを確認できたのです。そしてその結果、自然に触れられる環境で生活することには大きなメリットがあることがわかったのだといいます。

具体的には、自然に触れられる環境で暮らす人は、不安や抑うつが有意に低く、全体的な生活満足感が有意に高いことがわかりました。このメリットは、決して小さな、あるいは微妙なものではありません。実際、自然に触れられる環境で生活することは、結婚していることと比べて、精神的な健康に約33%もプラスの効果があることが示されたのです。(237ページより)

とはいえ、もし自然と触れ合える環境に暮らしていないとしても悲観する必要はないようです。なぜなら、ほんの少し自然に触れるだけで、一時的に幸せな気持ちになることができるから。

幸福感は、都市の中で緑の多い場所を通るだけでも高まりますが、これは、都市環境における花壇や樹木、ちょっとした緑地帯でさえも、私たちの気分を改善する効果があることを示唆しています。(238ページより)

なお、この知見と関連した、少しばかり興味深いトピックも紹介されています。ニューヨーク市で公共の公園やその近くで暮らしている人々は、少なくともツイート(ことばや顔文字)のポジティブさを評価した場合、幸福感が高いことが報告されているというのです。

ただし、これらは特段驚くべきことではなく、研究者が「公園の緑に囲まれて幸せな気分になったり、逆に渋滞や電車待ちにあって、自暴自棄にならない人はいないでしょう」と述べているという話にも充分納得できるのではないでしょうか?(237ページより)

もともと楽観的な性格でなかったという著者は、時間と労力をかけさえすれば、自分を幸せにする方向に、これまで身につけてきた考え方を生かすことは可能だと実感したそうです。本書を通じてポジティブ・シフトを身につければ、同じような境地にたどり着けるかもしれません。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2023年6月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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