【気になる!】新書『桓武天皇』瀧浪貞子著
[レビュアー] 産経新聞社
平安遷都で知られる桓武天皇(737~806年)の実像に迫った。宴席で平安京を賛美する歌を詠んだり、遣唐使を送り出す心遣いを演出し人心掌握に努めたりと、遷都と蝦夷征討を決断した「造作と軍事の天皇」をパフォーマンス好きな「政治人間」として描く。
生母の家柄が低く、即位するには生母の出自を克服する必要があった。少なくとも28人の后妃がいたため、女帝の多い奈良時代にはほとんど必要なかった後宮が発展するきっかけとなったという。天智天皇の曾孫である桓武を、壬申の乱で天智系に勝利した天武天皇系との擬制的血脈関係から読み解いた点が新しい。(岩波新書・1166円)