「プーチンは英雄」と思うなら読んでみたら?「本人の言葉」を集めて分かった屁理屈のワケ

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一次資料から考える陰謀論の屁理屈

[レビュアー] 田中秀臣(上武大学教授)

 ウクライナ戦争が始まってから「プーチンはNATOの脅威に抵抗した英雄である」みたいな歪んだ発言をたまに目にする。ウクライナ戦争は米国の仕組んだものであるという陰謀論の類いも多い。この種のトンデモを批判的にみるのは大切だ。

 だが、そもそもプーチンがなぜウクライナに侵攻したのか、その真意をマスコミの切り取りではなく、自分なりに一次資料から考えたい時はどうするか。その際に大いに助けとなるのが、ウラジーミル・プーチン『プーチン重要論説集』だ。

 本書には、前世紀末にプーチンが大統領に就任してからウクライナ戦争までの重要な演説やインタビューが漏れなく収録されている。プーチンの発言の背景やロシアの政治・経済状況は、編訳者の山形浩生がその都度、丁寧に解説してくれるのでとてもわかりやすい。また最後には、ロシア政治に詳しいジャーナリストの黒井文太郎との対談もあり、プーチンの発言をさらに客観的に理解できる。

 プーチンの発言を追っていくと、ロシアを偉大な国として再生したいという願いが、西側への失望や自らのプライドの高さから、次第に事実に基づかない支離滅裂な陰謀論に結びついていくのがわかる。米国やNATOの脅威に抗するためのウクライナ侵攻といった屁理屈はまさにプーチン自らが発生源だ。時にはまともなこともプーチンは語るが、そこに騙されて全体像を見失うな、と本書は教えてくれる。

新潮社 週刊新潮
2023年10月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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