江戸時代には「大独身時代」もあったし…「恋愛結婚」、もう終わってるかも

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恋愛結婚の終焉

『恋愛結婚の終焉』

著者
牛窪恵 [著]
出版社
光文社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784334100681
発売日
2023/09/13
価格
1,034円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「恋愛力」は屁の役にも立たないから

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 少子化が叫ばれて久しいが、実効性のある対策はなかなか出てこない。今や少なからぬ若者が「恋人はほしくない」と考えており、結婚や育児は「手の届かない贅沢品」と感じるようになっているのだ。

 こうした状況に対し、牛窪恵『恋愛結婚の終焉』は、今や恋愛と結婚を切り離すべき時だと説く。自力で異性を見つけて恋愛し、結婚へ進むという考え方は、現代には合わなくなっているというのだ。

 著者は、歴史や社会学、そして脳科学など様々な面から、結婚のあり方を検証してゆく。結婚の歴史は実に面白く、奈良時代は夜這いが全盛、鎌倉時代から嫁入り婚が盛んになるものの、江戸期には「大独身時代」が来るなど、時代によって結婚の姿は大きく様変わりしている。恋した相手と結ばれるべきという「常識」は、実のところここ数十年の考え方に過ぎない。

 それどころか、恋愛と結婚は本来水と油で、燃え上がった恋ほど長続きはしないという。いい店を知っている、新しいアクセサリーにすぐ気づくといった「恋愛力」は、結婚生活では屁の役にも立ちはしない。

 といって、流行のマッチングアプリも、未婚率改善にはあまり寄与しないようだ。その理由を読めば、なるほどと苦笑しつつ納得してしまうだろう。

 終章では、現場で多くの取材を重ねた著者ならではの、各方面に向けた提言がなされている。耳の痛いことも多そうだが、結婚に悩む人には一読を勧めたい。

新潮社 週刊新潮
2023年10月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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