『恋愛結婚の終焉』
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「恋愛力」は屁の役にも立たないから
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
少子化が叫ばれて久しいが、実効性のある対策はなかなか出てこない。今や少なからぬ若者が「恋人はほしくない」と考えており、結婚や育児は「手の届かない贅沢品」と感じるようになっているのだ。
こうした状況に対し、牛窪恵『恋愛結婚の終焉』は、今や恋愛と結婚を切り離すべき時だと説く。自力で異性を見つけて恋愛し、結婚へ進むという考え方は、現代には合わなくなっているというのだ。
著者は、歴史や社会学、そして脳科学など様々な面から、結婚のあり方を検証してゆく。結婚の歴史は実に面白く、奈良時代は夜這いが全盛、鎌倉時代から嫁入り婚が盛んになるものの、江戸期には「大独身時代」が来るなど、時代によって結婚の姿は大きく様変わりしている。恋した相手と結ばれるべきという「常識」は、実のところここ数十年の考え方に過ぎない。
それどころか、恋愛と結婚は本来水と油で、燃え上がった恋ほど長続きはしないという。いい店を知っている、新しいアクセサリーにすぐ気づくといった「恋愛力」は、結婚生活では屁の役にも立ちはしない。
といって、流行のマッチングアプリも、未婚率改善にはあまり寄与しないようだ。その理由を読めば、なるほどと苦笑しつつ納得してしまうだろう。
終章では、現場で多くの取材を重ねた著者ならではの、各方面に向けた提言がなされている。耳の痛いことも多そうだが、結婚に悩む人には一読を勧めたい。