無意識の思い込みは手放して!心がふっと楽になる「認知行動療法」

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働く人のためのメンタルコントロール

『働く人のためのメンタルコントロール』

著者
人見ルミ [著]
出版社
あさ出版
ISBN
9784866673981
発売日
2023/09/12
価格
1,650円(税込)

無意識の思い込みは手放して!心がふっと楽になる「認知行動療法」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

日常生活のなかで、適切なメンタルコントロールを行うのはなかなか難しいもの。たとえば仕事中にイラッとするようなことがあったとしても、すぐに感情を切り替えられなかったりすることは少なくないのではないでしょうか。あるいは、些細なことで落ち込んで、そんな気持ちを引きずってしまうこともあるかもしれません。

そこで参考にしたいのが、『働く人のためのメンタルコントロール』(人見ルミ 著、あさ出版)。著者は「マインドフルネス」の講師として、全国の企業で働くビジネスパーソンのストレスを軽減するために尽力している人物です。

もうすっかりご存じだとは思いますが、「マインドフルネス」とは「いまここに注意を向ける」メンタルコントロール法。これをもとに、近年では最先端の心理学である「認知行動療法」をも紹介しながら、これまで多くの方に「心を整える方法」を伝えてきたのだそうです。

興味深いのは、そんな著者による以下の発言です。

実は、ネガティブな感情であるイライラや不安は、私たちの周囲の出来事、つまり外的要因によって生じる一方で、それ以上に、物事を捉える際の自分の「思い込み」すなわち「認知」の影響を大きく受けています。

この無意識に自分を支配してきた捉え方「認知」に気づくことで、実は私たちはとても簡単に自身の感情やメンタルをコントロールできるようになるのです。(「はじめに」より)

日本ではまだ多くの人には知られていないものの、実際はすでに心療内科など臨床の現場では使われている手法だそう。多くの研究が行われ、科学的なエビデンスも数多く蓄積されているのだといいます。つまり本書にも、そうした知見が凝縮されているわけです。

CHAPTER1「『認知』が私たちを変える」のなかから、基本的なことがらを抜き出してみましょう。

「思い込み」がネガティブな感情を引き起こす

なんらかの出来事に接した際、私たちはつい感情的にネガティブな反応をしてしまうことがあります。著者によればその原因は、幼少期から大人になるまでに培ってきた認知による“きっとそうだ”“そうに違いない”という「思い込み」であるようです。

「今、ミスをしてしまった。きっと私は馬鹿だと思われているに違いない」

「仕事が遅くて上司に叱られた。きっと嫌われているだろう」

「お客様からクレームを言われた。自分はダメな人間に違いない」

(23ページより)

なにかあったときこのように捉えてしまうのは、多かれ少なかれ誰にでも経験があるもの。なぜなら私たちの誰もが、すぐにプラス発想ができるわけではなく、幼少期からのさまざまな失敗体験によって心の傷を負ったり、他者から叱責されたり、ばかにされたりする経験をしながら成長しているから。

そのため、自分に対する「私ってダメだなあ」というような勝手な「思い込み」(信念)を持っているということです。いいかえれば、過去の体験によって培われたネガティブな感情の影響を、誰もが受けているということなのでしょう。

したがって、メンタルコントロールを行うとき最初に心がけるべきポイントは、自分が過去に体験した「感情の記憶」と「思い込み」がリンクしている点を知ることだと著者はいいます。端的にいえば、人間関係のみならz仕事の生産性やパフォーマンスにも影響を及ぼす「思い込み」は、どんな人でも持っているものだと理解することが重要なのです。(23ページより)

思い込み=認知を変えると心が楽になる

ビジネスを進めるうえでも、過去の枠組みや信念などが阻害要因になってしまうことがあります。

時流が変わっているのに過去の成功体験だけを引きずっていたり、逆に「過去にも失敗があったから」など、事実とは異なる自分の体験に基づいた「縛り」が邪魔になったりして、せっかくのチャンスを逃してしまうことはないでしょうか?

第3世代と言われる最先端心理学では、この「思い込み」「信念」のことを「認知」と言い、自分の受け取っている感覚認知を「自己認知」と言います。(27ページより)

もちろん、それが自分にとっても周囲にとっても「適応的」(事実に則った思考)な認知であるなら問題はないでしょう。でも、「非適応的」(事実と異なるのに、「そうだ」と思い込んでしまう歪んだ思考)な認知をしてしまったら?

そんなときには、精神的に不安定になったり、人間関係に歪みが生じたり、モチベーションが下がったり、仕事のパフォーマンスにも影響してしまうわけです。

そこで、アメリカをはじめとする精神科の臨床現場で取り入れられ、注目を浴びているのが、事実に即してより楽な捉え方をする「認知行動療法」という手法。日本の精神科領域の臨床の現場でも積極的に取り組まれるようになり、科学的にも効果があることがわかってきているようです。

この認知行動療法は、何も専門家だけが実践できるものではなく、その基本的な考え方を学ぶことで、私たち一般の人たち誰もが日常において実践できるシンプルなメソッドでもあります。日常生活に取り入れることによって、鬱病の改善のみならず、感情をコントロールできることも明らかになっています。(28ページより)

たとえばビジネスのマネジメントにおいては、チームで組織がうまく調和し、より力強く前進するためにはどうしたらいいでしょうか? 当然のことながら、各自がそれぞれの個性、性格や認知の特徴をよく理解しつつ、上手にメンタルコントロールをしていくことが求められるはず。

そんなところからもわかるように、認知行動療法は、すべての人の個性やタイプに適応し、誰でも使うことのできるメンタルコントロールのメソッドだということです。

「考えてみたら、ずいぶん極端に思い込んでいたかも」とかこの認知に気づきさえすれば、これまでクセになっていた不安やイライラが回避でき、他者を受け入れる心の領域は広くなり、ゆとりや幅が出て、メンタルを安定させ、ストレスを軽くすることができるようになるのです。(27ページより)

だからこそ著者は、「認知を変えると心が楽になります」と断言しているのです。(27ページより)

近年では、心と体両面の幸せを追求していくことが、個人のみならず企業にも求められています。そんななか、心を曇らせるベールを取り除き、気持ちが晴れるコツや具体的な実践法が紹介された本書はきっと役立つはず。より快適に働くために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: あさ出版

メディアジーン lifehacker
2023年10月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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